しんどいオカマのお悩み相談 その45.仕事ができなくてしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は仕事ができない女性からのお悩みよ。
店内で客がゲロを吐いたときに見せるゲイバーのママの表情って、「プロ」って感じがするわよね。
【お悩み】
24歳の女性で、販売職です。
仕事ができなくて辛いです。今の仕事に就いて2年が経つのですが、周囲と比べるとミスが格段に多く、いまだに勝手のわからない業務がたくさんあります。
自分では努力しているつもりなのですが、上司には「新人のころから成長していない」などと言われ、同僚にはあきれられています。
仕事自体は嫌いではないのですが、簡単な業務も十分にこなせない無能な自分が情けないです。
このまま周囲に迷惑をかけるのであれば、辞めてしまったほうがいいのでしょうか?
ただ、もし辞めるにしても、他でやっていける自信がまったくありません。
どうすればいいのでしょうか。
職場によって環境はまったく違うのよ
「元気でね。あなたに合う仕事が、きっとどこかにあるはずだよ」
昔、アルバイトを辞めるときに社員の女性から言われた言葉よ。
新卒で勤めていた会社を辞めたアタシは、しばらく定職に就かずアルバイトで生計を立てていたの。
「面倒な人間関係から開放されたい」そう思って応募したアルバイトは、「誰にでもできる簡単なお仕事」のはずだったわ。
だけど当時のアタシには、その誰にでもできる簡単なお仕事が、まったくと言っていいほどできなかったのよ。
何をするにもミスしていたから常に誰かに怒られていたし、何もひとりで任せてもらえなかったわ。
人との距離のとり方もわからなくて、妙にハイテンションで接したり、かと思えば無愛想になったり。
きっと周囲からは「ちょっと仕草がオカマっぽい、おつむの弱いでくの坊」と思われていたに違いないわね。
情けなさと、悔しさで毎日泣いたわ。
「誰にでもできる」ことができないってことは、自分がどんなに無能であるかを常に突きつけられているようなものでしょう?
好きで選んだアルバイトだったのに、いつのまにか、仕事も人もすべてを忌み嫌っていたわね。
結局、そのアルバイトは1年ほど続けて辞めてしまったわ。
それからしばらくして、縁があって今の会社に就職したの。
すると一転、アタシは社内で「仕事がデキる人」だと思われて、部下もできて、上司からは頼られて、今では「裏社長」なんて呼ばれているのよ。
社員の能力が低いから相対的にアタシがデキる人になったわけではないわ。むしろ以前のアルバイト先よりは、うんと優秀な人が揃っているはず。
なぜアタシがそういった評価を下されることになったかというと、それは「環境の違い」としか言いようがないわね。
だってアタシ自身の言動は、アルバイト時代から少しも変わっていないのだから。
仕事ができないのは誰のせい?
仕事に対して真摯に向き合っているならば、仕事の出来不出来は、自身の能力を引き出してくれる環境がきちんと整っているか否かに大きく左右されると思うわ。
とくに「自分を上手く育ててくれる人がいる」という環境は、自身の成長にとってもっとも重要な要素となるわね。
最初から自分で何もかもこなせる能力が備わっている人ももちろんいるけど、新人なんて真っ白なキャンバスのようなものだし、どのように染まっていくかは上司や先輩の指導次第といっても過言ではないわ。
思い返せば、アタシはアルバイト時代に、上司や先輩から何ひとつ満足に業務を教えてもらえていなかったわね。
「ウチにマニュアルはないから、目で見て盗んで覚えてね」と言われ、勝手がわからず困惑していると、サボっているとみなされる。
わからない箇所を尋ねても「どうしてそんなこともわからないの?」と相手にされず、ミスをすれば怒鳴られる。
そこは「最初からすべてができる人」しか必要のない場所だったのよ。
対して今の会社では、わからないことは上司や先輩が何度でも教えてくれたし、ミスに対しては、周囲が一丸となってカバーしてくれたわ。
おかげでのびのびと仕事ができて、次第に成果を出せるようになったの。そして、その成果を周囲が順当に評価してくれた。
アタシは、仕事ができるようになったの。
結局、仕事は環境が9割なのよ。それはどんな零細企業でも、大企業でも変わらないわ。
昔、「置かれた場所で咲きなさい」なんてタイトルの本があったけど、アタシとしては「肥溜めに花は咲かない」と声を大にして言いたいわね。
仕事は環境が9割。では、残りの1割は何かというと、それは本人の能力がその仕事に適しているかどうかよ。
酒焼けしたしゃがれ声のオカマにアナウンサーは向かないわよね。
「きゃー!やっだぁーん!」と道端の虫を見て叫ぶオカマに陸上自衛隊員は向かないわよね。
それと同じで、どんなに努力をしても仕事に本人の気質や能力が追いつかないこともあるのよ。
以前、会社に中途採用で入ってきた若い男の子がいたの。
アタシが指導員として手とり足とり根気よく教えていたのだけど、言葉を選びながら何十回と同じことを教えても、まったく成長が見られなかったのよ。
「アタシの指導方法が合わないのかしら?」と思って、信頼のおける部下たちに指導をバトンタッチしてみてもダメだった。
「大器晩成型かもしれないし、優しく、根気よく教えていこう」とみんなで指導を続けていたけど、ひと月経ち、ふた月経っても、彼は仕事をこなせるようにはならなかったわ。
結局、彼は退職願を手渡してきたのだけど、最後に「自分にはどうしても難しかった。せっかく教えてくれたのに申し訳ない」と言っていたわね。
これまで何十人と人を育ててきたけど、こんなことは初めてだったわ。
もちろん、アタシたちの指導に至らない部分があった可能性もあるけど、どんなに本人にやる気があっても、どんなに時間をかけて教えても、人によってはできないことがあるのだとわかった。
だから、アタシは最後に彼にこう言ったのよ。「元気でね。あなたに合う仕事が、きっとどこかにあるはずだよ」と。
結局は運次第のところもあるのよ
相談者のあなたは、今どんな環境で働いているのかしら?
丁寧に仕事を教えてくれる人がいる?いつかは自分の能力を発揮できそう?
もしそうでなければ、いっそ職場を去るか、異動願いを出すという選択肢は視野に入れてもいいと思うわ。
職場が変われば、環境と、自身が発揮できる能力はガラリと変わるものよ。
「ここで通用しなければどこでもやっていけない」なんて思わなくていいからね。
アタシみたいなおつむの弱いでくの坊のオカマでも、なんとかやっていける場所を見つけられたのだから。
あなたも、いつかそういう場所を見つけられるはず。いつか必ずよ。
さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
送り先は、アタシのツイッターアカウント(@BS_dim)のDMか、メールフォーム(okama.onayami@gmail.com)まで。
【お悩み相談内容】と【年齢、性別、職業など簡単な自己紹介】を忘れずにね。いただいた相談内容、個人情報はこのコーナー以外では利用しないし、長期的に保管することもしないから安心して。
ついにお悩み相談が本になったわ。
連載に加筆修正を加えたものに、書籍だけの書き下ろしのお悩みも多数。さらにアタシが異色肌ギャル・浄土真宗僧侶に相談する「逆お悩み相談」のコーナーや、オカマに聞きたい一問一答108問も収録。大ボリュームで絶賛発売中よ!
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また、このコーナーに関するご意見やご感想もお待ちしているわ。とっても励みになるから、気軽に送ってもらえると嬉しいわ。よろしく。