しんどいオカマのお悩み相談 その44.人見知りでしんどい?

2018/10/11 UPDATE

しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は人見知りの女性からのお悩みよ。
そうね、人見知りが過ぎてシャドーボクシングみたいな動きをしながらしゃべるオカマを知っているわ。

【お悩み】
27歳の女性で、食品会社の総合職です。
この歳になって恥ずかしい悩みなのですが、人見知りで困っています。
初めて会う人とは何とかごまかしごまかし会話がもつのですが、会うのが2回目、3回目となると話すことがなくなり、気まずい空気に耐えられなくなります。
明らかに挙動不審になって目をそらしてしまうので、相手から変なやつだと思われていないか不安です。
どうすれば人見知りを克服することができるのでしょうか?

カナディアンオカマが誕生した話

昔、カナダにしばらく滞在していたことがあるの。
そこでは宿泊しているホテルのメイドから唐突にヘビーな身の上話をされたり、道を歩いていると、おばちゃんから唐突に「ハーイ坊や!道に迷ってなぁい!?」と話しかけられたりしたわ。
バーに行けば遠く離れた席の大柄な男性から「ハーイ!どこから来たの?とりあえず飲もうか、乾杯!」と話しかけられて、そのまま夜中まで一緒に飲んだこともあったわね。
幸い、詐欺でもなかったし、危ないクスリを売られることもなかったし、アタシの唇が奪われることもなかったわ。
ジャパニーズオカマが珍しかったからなのか、もともとの国民の気質なのかはわからないけど、人々は「気さく」というよりもさらに深く、アタシの内面にずかずかと入り込んできたの。
人見知りのアタシは、「もはやこの国には『人見知り』という概念が存在しないのだろうか」と思いながら毎日震えていたわ。
だけど、そんな異国の異様な文化にも、不思議と慣れてしまうものなのよね。
しばらくすると、初対面の人との会話でも、「HAHAHA!」なんて笑いながら、つたない英語で軽いジョークまで言えるようになっていたわ。
リアクションも「ウワォ!」「マイガッ!」とどんどんオーバーになって、すっかり現地の気風に染まっていたわね。
人見知りを克服した、カナディアンオカマの誕生よ。

そんな楽しい海外の生活も、「金が尽きる」という致命的な理由で終了したわ。当時のアタシは無職で、現実に行き詰まった末の国外逃亡だったのよね。
ただ、日本に帰国したあとも、カナディアンオカマとしての自己肯定感や万能感は続いたわ。誰にでも親しげに話しかけて、誰とでも会話を続けられるようになっていたの。世の中の人、物、すべてが輝いて見えたわ。
だけど、しばらくすると、そんな自分の言動に違和感を覚えるようになったのよね。
「相手は本当に自分の話を快く聞いてくれているのだろうか?」「無理して自分に合わせてくれているだけなのではないだろうか?」
自己肯定感も万能感も消えて、アタシはまた、以前のような人見知りに戻ってしまったの。

会話に不正解なんてないのよね

アタシが人見知りに戻ってしまったのは、「なんだか相手から気を遣われているような気がする」という申し訳なさと、それゆえに相手から嫌われてしまうことへの恐怖心からだったわ。
カナダに滞在していたときは、何を言っても一旦はいち意見として受け入れられるという安心感があったけど、母国で母国語を使ったコミュニケーションに切り替えたときに、それがなくなってしまったのよね。
日本に帰国した途端、会話の中で常に相手の望む正解を選び続けなくてはならないというプレッシャーを、たしかに感じるようになったの。
それがどうにも居心地が悪くて、困惑して、結果、人見知りに戻ってしまったのよ。

主語がかなり大きくなるけど、これは日本人の気質ともいえるんじゃないかしら。
"五人組"のような連帯責任と相互監察の文化が根づき、礼節を過度に重んじる日本社会では、会話の中で空気を読むことの優先度が高くなることは必然。
まるで牽制し合うかのようなコミュニケーションが当たり前になってしまっているのよね。

そうなると、もはや日本は一億総人見知りと言っても過言ではないわ。逆に、誰にでも心を開いて、気さくに話しかけるのは酔狂なことともいえるわね。

では、そんなお互いに心を閉ざしたまま人間関係が築かれるこの国で、人見知りを解消するにはどうすればいいのかしら?
もはや、自分が心を開く側になる、つまり酔狂な人間になるしかないんじゃないかしら。
「それが恐ろしいから人見知りなのだ」という意見が飛んできそうね。
だけど、お互いが「相手の望む正解を選び続けなければならない」と怯えているような状況では、相手からの「不正解」にはいたって寛容になっているはずよ。
たとえ「不正解」を選んでしまったとしても、たちまち嫌われてしまうなんてことはないし、気を遣われることはお互い様なのだから、そこに居心地の悪さを覚えなくてもいいのよ。
それらを踏まえた上で、自分の思ったまましゃべることに少しずつ慣れていけば、自然と人見知りは解消されていくのではないかと思うわ。

人見知りもひとつの能力だわ

人見知りって、周囲の空気を読んでニーズを汲み取る力があるということだから、かならずしも悪いものとはいえないのよね。
その能力を正しく、存分に使うためにも、あえて地の自分を出していくことが大切だと思うわ。周囲の意見を取り入れながらも、自分の意思を通すことは決して不可能じゃないのよ。
アタシも最近は、他人の寛容さを信じて、だけど手前勝手にならないよう意識してしゃべっているの。カナディアンオカマは、カムバックしつつあるわ。

さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
送り先は、アタシのツイッターアカウント(@BS_dim)のDMか、メールフォーム(okama.onayami@gmail.com)まで。
【お悩み相談内容】と【年齢、性別、職業など簡単な自己紹介】を忘れずにね。いただいた相談内容、個人情報はこのコーナー以外では利用しないし、長期的に保管することもしないから安心して。
また、このコーナーに関するご意見やご感想もお待ちしているわ。とっても励みになるから、気軽に送ってもらえると嬉しいわ。よろしく。

投稿者名

BSディム

夜な夜なネオン街をねり歩くアラサーのオカマ。
昼間は真面目な係長だが、退勤から3駅で夜の帳をドレスに変える。
中学2年生で周囲にカミングアウトし、以後オカマとしての人生を歩む中堅オカマである。
Twitter:https://twitter.com/BS_dim Blog:http://aiokama.hatenablog.com