【第五話】はやく帰ってきた日は
ツイッターで大人気のshin5さん。今回ははやく仕事が終わった日の過ごし方を教えてくれました。
忙しい毎日でも、たまには早く帰れる日がある。
「打ち合わせが終わって、そのまま帰るよ」
電話でそう伝えると、妻がちょっとビックリして子どもたちに嬉しそうに話す。
受話器の向こうからにぎやかな声が聞こえる。
「今日は早く帰ろう」そう思って、少しだけはやく駅まで走った。
家に着くと、今日は娘が玄関で待ってくれていた。
「ただいま」「おかえり!」廊下を歩くたびに、二つ結びにした髪が揺れるのがうさぎのようでとても面白くて可愛い。
機嫌の良さそうな娘の手をつないでリビングに向かい、荷物を置いて妻と子どもたちにも声をかける。
夕焼けチャイムが鳴っても、外はまだ明るい。妻が夕食を作っているにおいがしておなかの奥が元気よく反応した。ネクタイを緩めながらキッチンに顔を出す。歌を口ずさみながらバタバタと料理をする妻の姿も、さっきの娘の姿と重なって可愛いなと思う。
早く帰ってきてよかった。「夕食の準備、もう少しかかるからお風呂に入ってきて」「はーい」そんな会話をしながら、子どもたちとお風呂へ向かう。
お風呂から出ると、部屋には夕食の美味しそうな匂いでいっぱいだった。白いごはんに、お味噌汁、肉じゃがとサラダと豚の生姜焼き。
どれもふわふわと湯気が出ていて、絶対においしい。下着姿で動き回るこどもたちをつかまえて、一人づつ服を着せたりクリームを塗ったりする。お風呂で一人一人洗うのも湯船に入れるのも大変なのに、なかなかいうことを聞かないのは、早く帰ってきた僕がいて嬉しいのとおなかがすいたのと、少し眠いからだと思う。
「さぁ、ごはんにしよう!」妻のその言葉に、テーブルを囲んで家族の笑顔が並ぶ。「平日にみんなでご飯をたべるのは珍しいかもしれないね」って、話をしながらたくさん笑って話をしたり、お箸の持ち方を直したりする。
たくさん喋りすぎてごはんを食べるのが遅い娘と、おかわりをする息子たちと台所をいったりきたりしたついでに、いつも僕がビールを出して飲み始めると妻が「私、食べ終わったからお風呂に入ってくるね」「うん、いっといで。ごゆっくり」と声を掛け合う。
みんなが食べ終わった食器を片付けてベッドまで見送ると、部屋が急に静かになって少し疲れた。仕事の疲れとは全く違うような、ディズニーランドのかえり道みたいな疲れがある。ただ、にぎやかで楽しい時間も僕にとっては癒しだが、妻にしてみたら毎日のこと。
お風呂あがりの妻に、そんな話しをした。「早く帰ってくると、楽しいけど疲れるね」「そうよ。私は毎日だからね」「いつもありがとう」「今日はどうしたの?」「ちょっとね」仕事が早く終われば、仕事仲間と居酒屋行ったり、一人でコーヒーを飲みたくなる時も正直ある。朝、妻と喧嘩をして家に帰りにくい日もある。それでも早く家に帰りたいと思うのは、待ってくれる人がいるからだろう。
結婚しても、恋人同士のデートの待ち合わせと同じで、ちゃんと待ってくれる人がいる。
カレンダーを見ると、今日の日付にマルが書いてあった。
「今日は大切な日だから、早く帰れてよかった」
「あら。忘れてると思った」
「忘れてはないけど、駅に着いてから思い出して」
「本当に?カレンダー見たとか・・・・・・」
「ちゃんとプレゼントもあります」
二人だけの時間もまた楽しくて、会話がはずむ。帰りが夜遅くなってからだと、いつも会話は少なくなってしまうから、今日はこのまま話をしていたら深夜になるかもしれない。
また疲れて、二人でぐっすり眠るのもいいかもしれない。
今日は早く帰れてよかった。