〇〇なときは映画に逃げろ!! ~第11回 体を動かしたくなるとき~ 後攻:カワウソ祭「ゾンビランド(’09年)」
■1 人はなぜスポーツをするのか
後攻のカワウソ祭です!さて、“〇〇なときは映画に逃げろ!!”……ご存知の通り、このコーナーのメインタイトルです。今回のお題は「体を動かしたくなるとき」。そんな時こそ映画に逃げろ!!エアコンの効いた暗い部屋でジッとして映画を観ろ!!!!本稿でも声を大にして、そのような主張をしたいと思います。
みなさんは、学校で数学の問題を解いたり、古典や歴史を学びながら「こんなこと勉強して将来何の役に立つんだ」と思ったことはありますか?大人になると身にしみて感じますが、地味な「こんなこと」を勉強しておかないと、基礎がないので将来いちいち困ることになるんですよね。スヤスヤ寝てる場合ではなかったな……。
ここ最近は猛暑に負け、一歩も外に出ず映画を観ているカワウソですが、体を動かす必要性は理解しているつもりです。なぜダルいスポーツをして健康になり、心身を鍛えなければいけないのか?お分かりでしょう。将来、ゾンビが大量発生した時に生き残るためです!
Blu-ray 1,800円(税別)/DVD 1,280円(税別)
発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C) 2009 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC ALL RIGHTS RESERVED.
もはやパニック・ホラーのひとつではなく、いちジャンルとして確固たる地位を確立したゾンビ映画。映画のみならず、ゲームや漫画に小説、様々なところに現れては、呻き、人間を齧る姿を見かけるのではないでしょうか。初めて映画にゾンビが登場したのは1930年代らしいので、90年続くコンテンツだと考えるとすごい人気です。なぜそんなにゾンビが好かれるのかというと、娯楽映画としてとても柔軟性が高いことが挙げられると思います。病院、会社、学校、都会に田舎……ゾンビはどこに現れても面白いし、ホラーにもコメディにもなり、ドラマを生み出します。
ゾンビ論、ゾンビ学、ゾンビガイド、ゾンビ研究と、興味のない人には「お前らどうしたんだ」と突っ込まれそうな複雑化を進めるゾンビ業界。そんな歴代ゾンビ映画の中でも、スマッシュヒットを飛ばした実力派である『ゾンビランド(’09年)』をご紹介します。
※恐い写真は出てきませんよ!
■2 ゾンビ好きには0か100しかない!
カワウソはそこまでゾンビに詳しいわけではなく、名作を押さえ、ドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズを追い、コツコツと良さそうな作品を漁る、ごく普通のゾンビ好きです。ただし、ゾンビものは全く見ないか、生涯見続けるかの2択。0か100しかありません。ゾンビ映画を1本も観ず、これからも観たくないなら無理強いはしませんが、1本でも観て楽しめたなら、これから永遠にゾンビを追う運命(さだめ)だと言えます。まだ自分はそこまでゾンビが好きかどうかわからない、もしくはゾンビ映画に挑戦したいという方。そんな方の入門編に最適かつ最高なのが本作なのです。
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ゾンビウイルスが蔓延し、ほぼ全ての人がゾンビ化したアメリカ。主人公(ジェシー・アイゼンバーグ)は実家を目指して旅する青年で、その目的地から「コロンバス」と呼ばれます。元は引きこもりのオタクでしたが、ゲームで磨いた反射神経と、自ら設定した“32のルール”を厳守することで生き延びています。道中でゾンビ殺しの天才、マッチョでワイルドな男タラハシー(ウッディ・ハレルソン)と出会い、しばし旅路を共にすることに。更に、狡猾な詐欺師の姉妹ウィチタ(エマ・ストーン)とリトルロック(アビゲイル・ブレスリン)と合流。リトルロックたっての希望で、カリフォルニア州ロサンゼルスにあるという、ゾンビのいない遊園地を目指すことに……。
劇中で明かされるコロンバスのルールは、ルール#1 「有酸素運動」(ゾンビに追い回されてもスタスタ逃げ続ける。それができない太った人から襲われたらしい)をはじめ、ルール#2 「必ず2度撃ちしろ」、ルール#3 「トイレに用心」、ルール#4 「シートベルトをする」などなど、ゾンビ映画あるあるを踏まえたユニークなもの。いわゆる「フラグ」をへし折るための知恵です。ルールを破った場合の描写も軽妙で、笑わせてくれます。気が小さく、理屈っぽく、安全第一のコロンバスは、野生動物のように荒っぽい行動のタラハシーとは対極的です。
劇中で特に重要になるのは、ルール#17 「英雄になるな」の項目。さらに後半では、タラハシーの言葉から追加されたルール#32 「小さなことを楽しめ」がキラッと輝いてきます。
■3 オタクと暴れん坊、嘘つきと子供の最強チーム
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なんせ人間がほぼ死に絶えているので、劇中の主な会話は4人のメインキャストのもの。各キャラクターが大変チャーミングなので、掛け合いを楽しむうちに、どんどん4人を好きになると思います。
コロンバスを演じるのは、中肉中背、天然パーマで可愛らしい顔つき。話し方は頼りなくオタクっぽい……。そんなヘナチョコ男を演じさせれば天下一品のジェシー・アイゼンバーグ。とても好きな俳優なのですが、まぁどの作品でもヘナチョコです。彼のオタクっぽさを爆発させた『ソーシャル・ネットワーク(’10年)』でアカデミー賞・主演男優賞にノミネートされていますが、ゾンビから生き延び、後にフェイスブックを創業したと思うと涙が出ますね。
ヒロインのウィチタ役は撮影当時まだ20歳ぐらいのエマ・ストーン。『ラ・ラ・ランド('16年)』の垢抜けたイメージになる以前の、リアル不良少女っぽさがとても可愛いです。妹のリトルロック役のアビゲイル・ブリスンも、最年少ながら6歳の頃には既に『リトル・ミス・サンシャイン('06年)』の大役、オリーヴを演じた実力派女優。
タラハシー役のウディ・ハレルソンは、『ナチュラル・ボーン・キラーズ(’94年)』で殺人鬼カップルの男を演じて人気を博しました。アカデミー主演男優賞にノミネートされた経歴もある立派な役者なのですが、コテコテの南部訛りにマッチョな体、プライベートで4回ほど逮捕され、父親はマフィアの雇われ殺し屋だったという、あまりにも”そういう人”すぎる濃いキャラクター。悪役などダーティーな役柄が多いので、彼が出てくると「ワッ!出た!」と心が躍ります。本作で演じるタラハシーはなかなか憎めない男で、笑いから涙まで、重要な見せ所を持っていきます。両手に銃を持って大量のゾンビを相手に無双するシーンなど、メチャクチャかっこいいんです。
■4 ゾンビを学び、来るべき日に備えよ
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物語の中盤に立ち寄ったハリウッドで、驚くべきゲストを迎えたり、恋のときめきや涙があったり……。そして、ラストシーンの遊園地では一体何が起こるのか?観客の期待通りにドタバタでカッコいい展開で、しっかりと落としてくれるのもこの映画のステキなところです。
グロテスクで血みどろな残酷描写を「ゴア」と呼びますが、『ゾンビランド』にゴア描写はほとんどなく、序盤の疾走感溢れるゾンビ・パニックシーンをはじめ、むしろスカッと爽やかなシーンが多いです。『ウォーキング・デッド』を“ゾンビが出てくる渡鬼”たらしめた、人の心の醜さや恐ろしさの要素をサクッと省き、青春ロード・ムービー要素を詰め込んで気持ちよく笑わせてくれます。
しかしその上で、ゾンビが派手な見せ場を作る“魅せゾンビ”指数もなかなか高いのです。ゾンビには基本系のヨタヨタと歩くもの、死人ならではの超人的体力で襲ってくるものなど多くのパターンがありますが、本作のゾンビは走ります。しかも花嫁やストリッパーなど、色んなシチュエーションを残したまま。カワウソはゾンビ発生の暁には迅速にゾンビ化し、魅せゾンビ側となって皆さんを追いかけ回すつもりです。
公開当時はそこまで有名俳優ではなかった主演陣はそれぞれが売れっ子になり、脚本家は後に『デッド・プール』シリーズを担当し、ルーベン・フライシャー監督は次回作『ヴェノム』の公開を2018年11月に控えています。監督が関わったゾンビドラマ『サンタクラリータ・ダイエット(シーズン1)』も最高です。更には、近いうちにオリジナルキャストで『ゾンビランド』の続編公開も予定されているとか!国内ではインディーズなゾンビ映画『カメラを止めるな!('17年)』が話題沸騰中。巨匠ジム・ジャームッシュも新作はゾンビ映画になるというウワサです。
あっと言う間に、沢山の観るべきゾンビ作品に取り囲まれましたね。有酸素運動で逃げ切る健康な身体の重要性を学び、楽しい終末に備えましょう!