しんどいオカマのお悩み相談 その6.年をとるのが怖くてしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は女子高生から、年齢についてのお悩みよ。なんで女子高生だったことがないアタシの回答が役に立つと思ったのよ。
【お悩み】
先日18歳になったごく普通の女子高生です。
年をとることに強い嫌悪感を覚えます。自分が持つ“女子高生ブランド”への意識が強く、今後は人生のピークから下降していくばかりだと思うと途方に暮れてしまいます。
なるようになるとも思いますが、「若いうちに死んだほうがいいのでは」という思いが強迫観念のように浮かび、日々悩んでいます。どうすればいいでしょうか?
年を重ねることで得られるものは
オカマ・ブス・金なし・彼氏なしという苦しみのカルテットにとらわれて、これまでアタシ自身、年齢のことなんてまったく気にしたことがなかったわ。
毎朝、自分の枕から知らないオッサンの臭いがしていることには気がついていたけど、「昨夜は知らないオッサンと寝ていたんだな」と自分を騙しながら枕カバーを替える日々よ。
そう思うとアタシも年をとったわね。脂っこい食事はほとんど食べられなくなったし、イケメンを見てもほとんどアプローチをしなくなったわね。いや、今は「アプローチ」というよりは、「捕食」という言い方が正しいかもしれない。
それはさておき、人間の身体そのものは20歳前後で成長しきって、あとは衰えていくだけだから、あなたが漫然と年をとることに恐怖を感じるのは分からなくもないわ。
まず美醜の問題が大きいわよね。
年齢を重ねれば、肌はたるみ、髪にコシがなくなって、頰や額に少しずつシワが刻まれていく。痩せにくくなるし、筋肉が衰えて姿勢も悪くなっていく。
メディアは連日のようにダイエットや美容に関する情報を流して、金と労力を惜しまずに美を保ちなさいと煽っているけど、それらはすべて、若ければ若いほど容易に手に入るものなのよね。
アタシたちオカマの暮らすゲイ業界も美醜がすべてだから、アスリートやモデル顔負けのストイックな生活を送って、マイナス10歳くらいに見えるゲイがゴロゴロいるわ。モテたい一心で集団パニックを起こしているとしか思えないわよね。
でもアタシはね、人がみな“若ければ若いほど美しい”とは思えないのよ。
10代のころって、相手を見た目で好きになることがほとんどでしょう。
それは仕方のないことだけど、周りがみんなそうだから、容姿で評価され続けることが当たり前と思ってしまいがちなのよ。
女子高生から見れば、20代はすっごく大人で、30代なんてオバサンで、40代からはおばあちゃんにすら思えるでしょうから、そのままでいたい気持ちもよく分かるわ。たったの十数年で「オバサン」になってしまうんだものね。
ただね、あなたは年を重ねた女性の美しさを知らないでしょう。憂いを帯びた目元や、艶っぽい声、線の美しい手を知らない。男性ホルモン過多で、アラサーオカマのアタシにはとても出せない魅力なのよ。
もちろん、それは堕落した生活で手に入るものではないということを忘れないようにしないとね。
女性の容姿は、「若い」よりも「若々しい」に真価があるとアタシは思う。美しさを手に入れるのに、18歳では幼すぎるわ。
女子高生ブランドなんて誰が求めてるのよ
あなたはこれまで“女子高生”というブランドで何か得をしたことがあるの?もしかしてあなた、JKビジネスの元締めなの!?
成熟したまともな大人の男女が、「女子高生だから」って理由で優遇してくれたことがあるなら教えてほしいわ。もしあるとすれば、それは「子どもだから」じゃないかしら。
そんな空想のネームバリューに人生の意味を見出すのはやめておきなさい。
ただ、知り合いのオカマが女装パーティのときにセーラー服を着てきたことがあったけど、スカーフを使ったリンボーダンスで爆笑をとっていたのは正直言って羨ましかったわね。
アタシはね、いつからかは覚えていないけど、尊敬できるかできないかで人を見るようになったのよね。
どんな仕事をしているかよりも、その仕事で何をしているのか、どういう思想を持って、そこから何を目指すのか。容姿と肩書だけじゃ心は動かないわ。
まわりのアラサーオカマたちも、「恋人にするなら尊敬できる人がいいわね。つまみ食いするだけならイケメンだけど」とのたまっていたから、容姿至上主義のはびこるオカマ業界でも、尊敬とはすなわち愛である、とみんな本心ではわかっているのかもしれないわね。
10代って、はじめて自分の人生の舵をとる期間だからね。何よりも怖いのは、一瞬で失われていく若さにかまけて、気がつけばなんにも手にしていないことなのよね。
“女子高生”というタイトルに勝る価値を手に入れられるのは、自分自身だけなのよ。
生きてりゃなんとかなるものよ、オカマだってちゃんと生きてるわ
経験していないことからわざわざ苦しみを見つけ出す必要はないわ。
アタシもいたいけで純真無垢なゲイ少年だったころは「小汚いオカマにだけはなりたくない!」と思っていたけど、いつのまにか小汚いオカマに囲まれた奇々怪々な日々を小汚いオカマとして過ごしているもの。
年とともに経験が増えて、悪知恵を覚えて、自然と「なんとかなる」が増えていったの。そして、今はそんな自分を受け入れている。
18歳のアタシは今のアタシを鼻で笑うだろうけど、今のアタシは18歳のアタシを鼻で笑えるわ。だからあなたも、次の春には「女子高生なんて」って笑ってるわよ。
さて、今回のお悩み相談は以上よ。
このコーナーでは読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
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