しんどいオカマのお悩み相談 その38.外ヅラと内面のギャップがしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は対外への振る舞いと本心にギャップのある女性からのお悩みよ。
ゲイバーに行くと常にハイテンションで楽しげにしているオカマがいるけど、帰宅してもずっとあんな感じなのかしらね?……化け物よ、化け物!
【お悩み】
二十歳の大学生で、女性です。
自分の性格とうまく付き合う方法がわかりません。
本来の自分は、甘えたがりで、怠け癖のある性格なのですが、普段はクールで落ち着いていて、しっかりものだというイメージをかたくなに守っています。
そのイメージを崩したくないがために、たとえば恋人に対して、ただ「好き」と言うこともできなくなってしまうのです。
自分の性格が人に良く思われないことを知っているので、もし他人に私の本当の性格を知られたら、嫌われてしまうのではないかと不安になります。
本来の性格で生きていくことに恐怖を感じ、人にどう見られているかをすごく気にしてしまいます。
どうすればいいのでしょうか?
何をもって失望されるかは自分で決めることじゃないのよ
アタシも普段は真面目な係長を演じていて、クールぶってはいるけれど、本当は誰かに甘えたいし、隙あらば怠けてやろうと思っているオカマよ。
営業車の中で昼寝をしていたら夜になっていたこともあるし、会議中、課題解決に向けて真剣に考えているフリをして、脳内で理想のイケメンとのデートから、結婚、妊娠、出産、子育てまでをシミュレートしたりしているわ。
そして、会議の内容が頭に入っていないから、部下に「議事録はできるだけ詳しく書くんだぞ」と指導して、あとで議事録を穴が空くほど読むのよ。
それでも何とか仕事をこなせているし、手前味噌ではあるけれど、部下からの信頼もそれなりにあるはずなの。
勤勉と怠惰。二面性を持ったまま、ずる賢く生きているのよね。
ただ、この前、事務所にひとりで残って仕事をしていたときに、あまりに作業が進まずイライラして、森進一のモノマネをしながら西野カナの歌を熱唱していたのだけど、実はまだパーティションの陰に事務員さんが残っていてね。
姿が見えた瞬間にお互い固まってしまったのだけど、彼女からひと言「楽しそうでいいですね」と言い放たれて完全に敗北。恥ずかしさで悶絶死しそうになったわ。
クールな係長のイメージが完全に音を立てて崩れていったわね。
それでも、事務員さんがアタシへの態度を変えることはなかったわ。
次の日も、また次の日も普段通りに接してくれたし、「西野カナ feat. 森進一」には一切触れてくることはなかったのよね。
アタシは自分の持っている品性下劣な部分を図らずもさらけ出してしまったわけだけど、それで相手に何か影響を与えることはなかったし、自分が影響を受けることもなかったのよ。
そう、何を恐れることもなかったの。たとえどんなに品のない人間だと思われたからといって、アタシは何を失うでもなかったのよ。
裏表があってこそ人間だし、みんなそれを分かっているわ
そもそも、他人の好き嫌いの感情って、自分が思うようにコントロールできるようなものじゃないのよね。
一説によると、物事に対する好悪の感情が偏ると、少数派となった種の存続に支障をきたしてしまうから、どんなゲテモノでも好み、どんな神聖なものでも嫌う人がいるのだとか。
確かに、世の中のすべての殿方が女装したオカマに興奮するようになってしまっては、さすがにオカマとしても「少子化、大丈夫なの?」と不安になってくるわ。
だから、どんなあなたでいても、あなたの好きな人に、好かれるときは好かれるし、嫌われるときは嫌われるってことなのよ。
そりゃ確かに、人は、怠惰であるよりは勤勉なほうがよしとされているし、誰かに頼って生きるよりも、しっかりと自立して生きているほうが望ましいし、好かれることは多いだろうけどね。
アタシだって脳内で結婚、妊娠、出産、子育てのシミュレートを行うときの相手は、やっぱり真面目で生活力があって頼りがいのあるイケメンだもの。
だけど、何の裏表もなく、常にご立派な人間であり続けられる人なんて、世の中にはほんの一握りしかいないわ。
その一握りは、アタシたちのような凡人から見れば、もはや一切の負の感情を失った狂人でしかないわよ。
そう、誰もが、体裁と建前を持った上で日常生活を送っているのよね。
そして、世間の人たちはそれをお互いに認識した上で生活しているわ。要は、外ヅラがいいのはお互い様ってことなのよ。
だから、そんな裏表のある自分自身を、もう少し受け入れてみてもいいんじゃないかと思うのよ。
たとえ自分が思っている本来の自分の姿と、対外の自分の姿が乖離(かいり)していたとしても、そのどちらも含めて自分そのものだと考えるの。「外ヅラがいい」のが本当のあなただってことを認めてあげるのよ。
そうじゃなきゃ、息苦しくてかなわないでしょう?
アタシだって昼は真面目な係長、夜はふらちなオカマ、内面はただのオッサンという、もはや自分が何者なのかわからないくらい様々な顔を持っているわ。
でも、そのすべてを含めてアタシという人間が形成されているのよね。どれが欠けてもアタシじゃない。
そうやって自身を客観視する視点を広く持つことで、自分を偽ることの苦しみを少しでも軽減させることができるのではないかしら。
完璧を装ったって、結局ハリボテでしかないのよ
そして、内外のあらゆる自分を受け入れてみることで、次第に気がつくと思うの。「どんな自分も、結局、大した人間じゃない。完璧じゃないんだ」って。
人から尊敬されたい、好かれたい、嫌われたくないと思うこと自体、その浅ましい考えはとても完璧であるとはいえないわよね。
どうあがいても、完璧にはなれない。だったら、自分の思う完璧を装い続けることに意味なんてないんじゃないかしら。
アタシもクールな係長は卒業しなきゃね。根が暗いからホットなオカマにもなれないけど、肩肘をはらない、飾らない凡庸であり続けたいと思うわ。
さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
送り先は、アタシのツイッターアカウント(@BS_dim)のDMか、メールフォーム(okama.onayami@gmail.com)まで。
【お悩み相談内容】と【年齢、性別、職業など簡単な自己紹介】を忘れずにね。いただいた相談内容、個人情報はこのコーナー以外では利用しないし、長期的に保管することもしないから安心して。
また、このコーナーに関するご意見やご感想もお待ちしているわ。とっても励みになるから、気軽に送ってもらえると嬉しいわ。よろしく。