しんどいオカマのお悩み相談 その37.無為に生きていく未来がしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は無為に時を過ごすことが不安になってしまった女性からのお悩みよ。
オカマ業界も格差社会だから、日々何の不安もなく有意義に過ごしているオカマもいれば、アタシみたいに泥水をすすって生きてるオカマもいるのよね。どうすりゃはい上がれるんだろうねえ、終わりのない、このオカマ階段。
【お悩み】
30歳の女性で、派遣社員として働いています。
私は、人生で一度も、勉強や就活、資格取得など、努力らしい努力をしたことがありません。
中学生のときに不登校になって以来、ただなんとなく生き続けているのです。
何の趣味も特技も持ち合わせていない、空っぽな人間です。
そんな私でも、長かった片思いが実り、金銭的な余裕はないけれども、今はとても幸せに過ごしています。
ただ、ときどき「このままではいけない」と、煙のように掴みようのない焦燥感に襲われてしんどくなるのです。
このまま無為に時間を重ねていくことが、とても怖いです。
それなのに、新しいことにチャレンジするでもなく、ただなんとなく日々を生きています。
どうすればもっと有意義に生きられるのでしょうか?
異形と呼ばれて
「バケモノ」と呼ばれたことがあるの。
まるまると太って、坊主頭にヒゲをたくわえて、オカマ言葉で迫ってくるブスなオッサンがいれば、確かに異形といわれても仕方がないわね。
これでも昔は、いつも堂々と胸を張って、夢と希望に溢れた爽やかな青年だったのよ。
それがなぜか、こんな異形のオカマに成り果ててしまった。
アタシはいったい、何者になってしまったんだろうね。アタシの需要って、いったい何なんだろう。
自分が何者であるかを知っている人は、幸福だと思うわ。
誰に必要とされているのかが分かっていれば、ただそのためだけに生きていけばいいのだからね。
逆に、何者にもなれず自分を見失ってしまった人は、耐え難い苦痛を味わいながらこの世を生き続けなければならないのよね。
「誰からも必要とされていない」という実感は、寂しさや虚しさという感情を、まるでヘドロのように心にまとわり付かせるのよ。
一寸先は真っ暗闇で、いったいどちらに向かって歩けばいいのか、不安で押しつぶされそうになるのよね。
相談者のあなたもきっと、社会の中で誰に必要とされているのかがわからなくなって、自身の存在意義がわからなくなってしまったのでしょうね。
情熱を注げる何かを見つけ、それに向かって努力して、社会における自分の役割をまっとうして日々を過ごしている人がどうしようもなく羨ましく思える。どうして自分も同じような人生を送れないのかと、悔しく思っているのでしょう。
アタシも、人生で努力らしい努力をせずにここまで生きてきたから、周囲の人がまぶしく見えることがあるわ。
そのコンプレックスから、努力の果てに自身の役割を、社会における価値を見いだそうとしてしまうのよね。
でも、努力をすること自体が目的になってしまって、その先に何を見据えているわけでもないの。
だから結局、何に情熱を注げばいいのかが未だにわからない……何者にもなれないでいるのよね。
好きなものさえあればいいのよ
ただね、アタシもそうなのだけど、あなたは、万人にとって代えがたい誰かになろうとしているのではないかしら。
まるで映画や小説の主人公のように、たくさんの人から必要とされなければ、人としての存在意義がないと思い込んでいるんじゃない?
他人をじっくりと観察してみるとわかるのだけど、実はそんな人ってごくごく一部なのよね。熱意があって常に輝いているから、どうしても目立ってしまうのね。
多くの人々は、ほんの些細な需要を糧として生きる人生を、受けいれて、納得しながら過ごしているの。人生ってきっと、本来はその程度のものなのよね。
だから、自身が誰かにとって代えがたい存在となるのは、本当はもっともっと狭い範囲の中だけであってもいいのよ。
たとえば、それは職場であってもいいわ。
「あなたがいてくれたらとても助かる」と誰かひとりに思われるような仕事をするだけでも、あなたには存在する価値がある。
あとは、友人同士の間柄であってもいいわね。
あなたのことを誘ってくれる友達は、すでにあなたを唯一無二の存在として必要としてくれているのよね。
そして、究極的に言えば、あなた自身が、あなたにとって何者にも代えがたい存在になってもいいの。
あなたには、好きなものがあるかしら?
何でもいいのよ。たとえば映画やドラマを観ることだったり、SNSで誰かと交流することでもいいわ。
心躍るものが何かひとつでもあれば、あなたは、あなた自身にとって需要があると言えるのではないかしら。
たった独りであったとしても、自分で自分を喜ばせることができるのであれば、それは価値のあることなの。
ましてや、相談者のあなたには、大好きな恋人がいるわよね。
あなたは彼のことを大切に思っていて、彼もあなたのことを大切に思っている。
お互いに、唯一無二の存在になっているのね。だったらあなたはすでに、「何者かになっている」ということよ。
大それた趣味や特技がなくても、好きなものがひとつでもあればいいのよ。好きなものを自覚することが、自分の存在意義になるのだから。
そんな狭い範囲でも、自分自身に価値を見いだせるということ。人生はそれだけで、「空っぽではない」といえるわ。
好きなものを見つけられないなら
「人は、十代のころにやり残したことにとらわれて生きていく」と聞いたことがあるわ。
もしかするとあなたは、無意識に、自分が不登校になったときに周りの人たちが経験していたことを取り戻そうと、必要以上にもがいている状態なのかもしれないわね。
アタシもそうよ。ロクに勉強なんてしなかったから、今はもっとたくさんのことを知りたいと思っているわ。
シャワーから流れる水がどうしてさらさらと手のひらから落ちていくのか、お気に入りのマグカップはどうやって作られているものなのか、どうして今、こうしてあなたとアタシが繋がっているのか……全部知りたい。
もし、あなたに恋人以外に好きだといえるものが何もなくて、それが虚しいというのであれば、これから十代のころに置いてきた何かを求めてみるのもいいんじゃないかしらね。
今からでも遅くないわ。人生、あと何十年と、その苦しみを味わいながら暮らしていくよりかはずっとマシよ。
あなたがどうか生きる糧を見つけられて、彼と一緒に、心身ともに健やかな生活が送れることを願っているわ。
さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
送り先は、アタシのツイッターアカウント(@BS_dim)のDMか、メールフォーム(okama.onayami@gmail.com)まで。
【お悩み相談内容】と【年齢、性別、職業など簡単な自己紹介】を忘れずにね。いただいた相談内容、個人情報はこのコーナー以外では利用しないし、長期的に保管することもしないから安心して。
また、このコーナーに関するご意見やご感想もお待ちしているわ。とっても励みになるから、気軽に送ってもらえると嬉しいわ。よろしく。