しんどいオカマのお悩み相談 その36.身近な人の死から立ち直れなくてしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回はお祖父さまの死から立ち直れなくなってしまった女性からのお悩みよ。
昔、葬式で姪っ子が棺に入った祖父のおデコにまんじゅうを乗せて遊んでた事件があったけど、死は人によって本当に様々な受け入れ方があるんだなと思ったわね。
【お悩み】
22歳の女性で、大学生です。
先日、大好きだった祖父を亡くしました。
大切な人を亡くす経験をしたことがなく、とてもショックでした。
祖父のことを思い出すと、どこにいても悲しく寂しく、辛くて涙が止まらなくなります。
しかし、この悲しみや寂しさを忘れたいわけではないのです。忘れてしまえば、祖父と本当に永遠のお別れをしてしまう気がするからです。
また、祖父が亡くなってしまったことをきっかけに、両親や姉妹、友人など、周りの人たちの死についても考えるようになりました。
あと何度、こんな悲しい思いをするのかと思うと、とても怖いです。
この気持ちとどう向き合えばいいのでしょうか?
祖母が亡くなったときの話をするわね
三十歳を超えたあたりから、人の死がずっと現実的で、身近なものになったわ。
アタシも祖父母を亡くして、幾人かの友人も亡くした。それから、遠い親戚や、会社関係の方の葬儀に参列することも増えたわ。
静寂の中で淡々と聞こえるお経の声、鼻に残る線香の匂い、喪服の着心地の悪さ。
アタシはお葬式が嫌いよ。好きな人はあまりいないと思うけど。
参列するたびに、心を削ぎ落とされるような気疎さと苦しみを感じてしまうからね。
身近な人であっても、そうでなくとも、人の死というものにはいつまで経っても慣れることがないわよね。
中でも、母方の祖母が亡くなったときは、人生でもっとも大きな悲しみと虚しさを感じたわ。
優しく可愛がってくれ、時に厳しく叱ってくれた祖母。
幼いアタシのわがままを聞いてくれた。美味しい手料理を作ってくれた。たくさん頭をなでてくれた、大好きなおばあちゃん。
そんな祖母が余命を宣告されたのは、アタシが高校生のときだったわ。
しきりに腹痛を訴えていたのだけど、病院に行くと、もってあと2年だと言われたの。ガンだったわ。
命が終わりを迎えるまでの2年間、アタシは祖母に何もしてあげられなかったの。というより、何をしてあげればいいのかわからなかったのよね。
アタシの両親は、旅行に連れて行ってあげたり、美味しいものを食べさせてあげたりしていたようだったけど、学生だったアタシにできることといえば、たまにお見舞いに行って、少し話をするくらいだったわね。
時間は、あっという間に過ぎていったわ。
そして、祖母は病室で、眠るように静かに息を引き取ったの。
アタシは何もしてあげられなかったという後悔で、しばらくふさぎ込んでいたわ。
祖母との思い出が頭を巡って、勝手に涙が溢れてくるのよ。
無力で、むしろ祖母から与えられてばかりだった自分を許すことができなかった。そして、身近な人の死を乗り越えることの苦しみを噛み締めたわ。
二度とこのような思いをしたくないと、強く思ったことを覚えているわ。
あなたの中に息づいている人のこと
時は経ち、日常の喧騒に埋もれて、祖母のことを思い出すことも次第に減ってきたわ。
むしろ今では、祖母の声も仕草も、手料理の味も、まるで雨の日のラジオみたいにノイズがかかって、はっきりと思い出すことができなくなってしまったの。
「ばあちゃんがいたころって、どうだったっけ?」と、家族に聞くことが多くなったわね。
ただ、優しかった、愛情をたくさん注いでくれたという思い出だけが、写真のようにワンシーンとして心の中に残っているだけなのよ。
そして、大切な人を失った耐えがたいほどの苦しみは薄らいで、今や祖母の存在は、じわりと心にしみる温かい思い出となったわ。
決して悲しみを忘れたくないと思っていたはずなのに、不思議なものよね。
そういえば、ちょうど先月、祖母の祥月命日があったのよ。
アタシにはふたつ違いの兄がいるのだけど、ふたりで祖母の話をしたわ。
「ああ、そんなこともあったっけ」と、お互いに欠けたパズルのピースを埋めるように、思い出話に花を咲かせたわ。
ふたりとも、悲しみや苦しみよりも、温かい思い出として、祖母のことを思い出していたの。
そして、話の中で兄はこう言っていたわ。
「昔、ばあちゃんに小うるさく言われていたことを、気がつけば自分の子供にも同じように言っているんだよね。テーブルに肘をつくなとか、箸をくわえるなとかさ。言い方もそっくりで……」
人は、誰でも必ず死を迎えるものよね。アタシも、相談者のあなたも、あなたの周りの人も、誰もがいつかはこの世を去っていくわ。
そして、その喪失感は次第に薄らいでいくの。薄らいでいかなければ、人生は絶望にまみれてしまうでしょうからね。
ただ、ふとした瞬間に、自分の中にその人の魂が息づいていることを実感することもあるのよ。
それが本当の意味での、「故人を忘れない」ということなのだとアタシは思うわ。
故人を忘れないということは、故人の意志を継承することでもあり、世代交代をするということでもあるの。それは、過去に存在していた人類が紡いできた歴史そのものよ。
相談者のあなたの中にも、すでにお祖父さまの魂が息づいているんじゃないかしら?
体は灰になっても、共に時間を過ごしたという事実と、その因果は決して消えないの。
悲しみを覚えておくことだけが、魂をつなぐことではないのよ。
アタシたちができることは
亡くなった人に対してアタシたちができることなんて、ほとんどないわよね。心から冥福を祈るくらいしかできないわ。
でも、生きている人に対しては、できることってたくさんあるのよね。
アタシの母は、祖母が亡くなったときに、「十分に親孝行はした。だから何も後悔はないよ」と言っていたわ。
対して、生前の祖母に何もしなかったアタシは、いまだ胸にざらついた後悔を抱えて生きている。
祖母の実の娘である母が、堂々と「後悔はない」と言えるのは、人として気高く正しくあり続けたからなのだと思うわ。
相手を尊重し、敬い、愛する。来る日に後悔をしないためにも、今、生きている人たちをもっと大切にしながら、日々を過ごしていくべきなんじゃないかしらね。
さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
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