育児 × 介護 = “戦略的”二世帯同居!への道 Step8:ついに終の棲家
義理の両親との三世代同居を決意し、「大型・中古・一戸建て」の条件で物件探しに奔走することになった私たち5人家族。
「良さそうな家があったら教えてね」と義父母から丸投げ依頼され、何の因果か個性豊かな珍物件ばかりを巡る羽目になる私たち若夫婦。
前回訪ねたのは、いわく有りげなホラー物件。もう私たちはマトモな物件にさえ出会えないのか…と絶望すら滲む日々に、ようやく一筋の光が…!
1.「お金持ちの建てた家」
選りすぐったとしても中々こうは揃わないであろう珍物件めぐりの毎日に、さすがに疲弊の色が隠せない我々夫婦。そろそろ他の不動産屋に仲介を頼もうか、そんな話も出始めていたある日のこと、担当Y氏から、運命的な連絡が入りました。
紹介された物件は築10年の6SLDK。間取り図からは、特にアクの強い感じは受けません。しかし間取り図の印象がアテにならないことは、これまでの物件で痛いほど身に沁みている私たち夫婦。疑心暗鬼に包まれながらも、若夫婦と息子、それにたまたま暇だったらしい義父の4人で、あまり期待もせずにその物件の見学に訪れました。
私たちを出迎えてくれたのは、穏やかな中年のご夫婦とそのお子さん達。
建物は、内装も外装もデザインに尖ったところはなくオーソドックスながら、天井が高く開放感のあるつくり。トイレやお風呂も広々として段差は少なく、手すりも完備しています。聞けば、旦那様のご両親をこの家で介護しながら暮らし、お父様はこの家で看取られたとのこと。
家は隅々まできれいに整えられ、長年専業主婦だという奥様手作りのパッチワークキルトなどが華やかに、しかし品良く飾られています。
いいじゃない!なんかすごく…いいじゃない!
今まで見てきた物件が、どれも必ずどこか引っかかる部分があったため、間取りが無難で室内が綺麗である、というだけで私達のテンションは急上昇です。
居住中の物件にもかかわらず、水回りやキッチンもとてもきれいにお使いです。担当Y氏も、これまでに無いほどの自信満々な様子で案内をしてくれます。
「二世帯住宅ではないのでキッチンは一つだけなんですが、なんと…二階にシャワールームがあるんです!」と言われ、思わず「欧米か!」と呟く私達。
深夜に帰宅することが多い旦那や、これから成長し思春期を迎える子どものことを考えると、この設備は非常に高ポイントです。
書斎のような小さな部屋から広いリビングまで、間取りもケレン味のないすっきりとした作り。売り主のご主人が仰るには、「前の家を建ててから10年ちょっとで一家で海外赴任になり、数年アメリカで暮らして日本に戻ってきたら、どうも元の家が狭苦しく感じて、それで壊して建て直したのがこの家です」とのこと。本当に欧米だった。
(…お、お金持ちだー!!!お金持ちの建てた家だー!!!)とどまるところを知らずに爆上がりするテンションを表に出さないようにプルプル小刻みに震える私たちに、某・超有名企業にお勤めで定年間近だというご主人は、この家を売る決意をした経緯を畳み掛けます。
「この家はとても気に入ってるんですが、離れて暮らす義理の母の介護が必要になりまして。私もちょうど定年だし、それでいっそ、妻の田舎に引っ込んで、自分の親も妻の親も子どもたちも、フロアを分けて全員一緒に住める家を建てて、のんびり暮らそうかと」
(…お、お金持ちだー!!規格外のお金持ちだー!!悠々自適のお金持ちだー!!)
10年ちょっとのサイクルで、気軽に何件も家を建て直す…しかも新たに建てる家も大変に立派そうな予感しかしません。ご主人の口から出る言葉の一つ一つが破壊力を持って我々薄給夫婦を襲います。
「あの庭石は〇〇(知らないけど多分有名な産地)から運ばせました」
「車椅子での生活もできるように、玄関も水回りも広めに作っています」
「キッチンはアメリカの家で気に入っていた○○(外国メーカー)のものを取り寄せました」
「この部屋はグランドピアノ設置用に床を補強しています(実際に置いてあった)」
次々と繰り出されるヘビー級お金持ちパンチによるオーバーキルを受け、息も絶え絶えの私たち。
突如として現れた、私たちの希望通りどころか、むしろオーバースペックな一軒家。
価格も何とか予算内に収まり、これ以上の物件は望めないのではないか…!
絶望の淵から一転し、にわかに喜色あふれる我々。
周囲の生活環境やご近所トラブル、地盤の強さや騒音問題が無いかなどももちろん調べなくてはなりませんが、そこさえパスすれば、すぐにでも契約を結びたいほどでした。
しかし、まだ義母がこの家を見ていません。お手数をかけて申し訳ありませんが…と売り主にもう一度家族全員で内見させて貰う旨をご了承いただき、その場で勇んで義母に電話をかけました。
そこで義母から返ってきた返事は、全く予想外のとんでもないものだったのです。
2.どこまでも、義母
「お義父さんも、私達もとても気に入って…とっても素敵なので、一度ぜひお義母さんにも見てもらいたくて…」そう携帯で話す私の耳に入ってきた義母の返事は、耳を疑うものでした。
「じゃあいいわよ、そこで」
絶句しましたね。
見てないんですよ。お義母さん。まだ一度も見てない家ですよ。これから(たぶん)一生住む家ですよ。
「面倒だし、みんなが気に入ったならもう決めちゃっていいわよ」と言う義母を、いやいやいやいやお義母さんそれはちょっと、と何とかなだめ、再度の訪問を約束しました。
帰り際に家の外観を改めてじっくりと見ても、とても築10年とは思えない綺麗さです。
ただ、一つだけ、パーフェクトに理想通りと思えたこの物件にも、問題がありました。
内部を見せてもらっていた時に売り主から説明された、引き渡し時期のことです。
売り主一家が引っ越す新しい家の完成がおよそ1年後のため、仮にこの家を購入した場合、契約から入居まで1年近くかかってしまうのです。
賃貸アパート住まいで、ローンを組む予定の私達若夫婦は良いのですが、義父母は持ち家マンションを売却し、それを新しい家の購入費用に充てる予定です(費用は親世帯と子世帯で折半)。
ちょうど1年後に都合良く義父母のマンションを買ってくれる人が現れる可能性は低いように感じました。そうなると、早めに売却を済ませ、義父母は今のマンションを出て賃貸で仮住まいを探さなくてはいけません。引越し費用に家賃に…と考えるとかなりの出費です。
しかし、今後、あの家以上に条件の良い家が見つかるかというと…?今までの多難な家探しの経緯を考えても、絶対にこのチャンスを逃してはならない…!そう強く心に誓う我々でした。
ようやく見つけた理想の家を後にした我々は、早速担当Y氏に「どうしてあの家を最初に見せてくれなかったんですか!」糾弾しました。本心か否か、担当Y氏の答えは「あんまり良いところを最初にお見せしてしまうと、他の所が色あせちゃうかな~って…」
いや、そういうのいいから!!と内心でツッコミを入れたのは私だけでは無かったことでしょう。
いずれにしても、この家に出会えて良かった、やっぱり担当がY氏で良かった…ような気がする。多分。おそらくきっと。なかば自分自身を催眠にかけるように、自分に言い聞かせる私でした。
3.順風満帆、と見せかけて
いよいよ理想の中古大型住宅、終の棲家を見つけた私たち。ひとまずここで第一部~家探し編~は完結となります。
次回は第一部の総集編として、長い珍物件めぐりの中で私達が戦いながら得た教訓、中古住宅を購入する上でのチェックポイントなどをまとめます。
そして第二部からは、やっと見つけた新居に入居するまでの、売買契約関連から親世帯のマンション売却、カオスな二世帯同日引っ越しまでの、長い一年間のドタバタを綴ります。
引き続き、私達の戦略的同居の経緯を見守ってください!