歌い手S!Nの「僕とデートしませんか」 その2:大須
イケメンながらも過激な面白キャラで、若い女子を中心に大人気の、歌い手S!Nさん。そんな彼が、地元・名古屋のビミョ~な魅力をバーチャルデート目線で気ままに紹介します。
アイスム読者の皆さま、こんにちは。第二回のお届けにあがりました、S!Nです。
名古屋の街を紹介しながら僕自身のことも紹介する、というテーマのもと、S!Nと名古屋の街をデートしている女子の気持ちをS!N自身が妄想しながら書く、ちょっと変わったデートコラム。本日も鋭意更新いたします。
第二回の今回は、大須のあたりを何となく。
これと言って目的地が決まってるわけでもない、緩めの1日を大須で過ごす私とS!N(一人称は既に女子である)、ご覧ください。
彼から突然の連絡、大須観音へ向かう私
「大須行く。行く?」
唐突な彼からの連絡。
いや、連絡なんてものはそもそも唐突なのかもしれない。
だけど前後に脈絡があるのが男女のやり取りってもんじゃないのかしら。
たとえば、明日一緒に出掛けない?とか。
脳内の乙女が文句を言いたそうにしてるのを黙らせて返事をする。
「行くー。何時に行くの?」
「もういる」
脳内の芸人さんがツッコミをしたそうにしてる。
大須観音駅2番出口すぐ。
バタバタと支度をして、彼が今いるという大須観音に向かった。
「意外と早かったね」
「あんまり遅いと怒るでしょ」
「急に呼び出しといて怒るほど身勝手じゃないよ流石に(笑)」
常識的に考えればそうだけど、そうとも言い切れないから怖い。
「大須で何か用事とかあるの?」
今日の目的を尋ねてみる。
「わからん。逆に何しに来たの?」
「えっ」
何しにって、それ私に聞く?
質問の意図が分からなくて混乱する。
「そこはすかさず、『会いに来た』って返事したら胸キュンポイントゲットでしたよ」
急に呼び出されてそんなポイントゲットできるか!!
自由過ぎる彼は、答え損ねた私を差し置いて、胸キュンポイントってなんやろな、ってひとりで笑ってる。
「大須観音って織田信長から寺領500石もらってたんだって」
境内にあった看板を読みながら歴史の話をしてくれたけど、へぇ、そうなんだ、としか返せなかった。
彼のうんちくを聞きながら商店街をぶらり
大須は名古屋で最も栄えている商店街だ。
東京の秋葉原、大阪の日本橋と並んで三大電気街と呼ばれているらしい。
飲食店や服飾雑貨店、古くからのお店や新しくできたカフェ、色々な空気が混ざっている。この街の雰囲気は一言では言い表せないな、なんて考えながら彼のうしろをついて歩く。
歩く。
歩く。。
「道迷ったわ」
そうかなって思ってた。
「お腹空いた」
「たくさん歩き回ったもんね(笑)」
「人のミスを掘り返すのよくないぞ」
「でも私はそんなにお腹空いてないかも。ちょっと喉は乾いたかな」
「じゃあ唐揚げとミルクティーかなんか買ってくるよ」
「はーい」
「僕がそっちの立場だったら『また迷わないようにね』ってトドメさすのに」
大須では定番とも言えるフードを片手に、午後の公園で小休止。
彼はミルクティーの底に沈むタピオカを眺めながら質問してくる。
「タピオカってなにか知ってる?」
「キャッサバから作ったデンプンのことよね」
「わぁ。よくご存知で」
絶対に私のこと馬鹿にしてるでしょ。
「じゃあ、萬松寺を建てたのは誰か知ってる?」
じゃあの使い方おかしくない?
タピオカと萬松寺を同列で語るの?
「タピオカの原料を知ってて萬松寺を建てた人を知らないんですか?」
「それセットじゃないでしょ」
「大須と言えばタピオカミルクティーと万松寺ビル、みたいなとこあるでしょ」
私が間違ってるのかなって気分になってくるけど、これは多分、自信満々に適当なことを言う、っていう冗談だ。
ほんと分かり辛い。
「萬松寺は信長のお父さん、織田信秀が建てました」
「へぇ、そうなんだ」
「信秀の葬式の時に信長が位牌に向かって抹香を投げつけたとこ」
「へぇ」
「人質時代の家康も何年かこの寺で過ごしてた気がする」
やっぱり歴史の話になると饒舌だ。
万松寺ビルは飲食店やゲームセンターやメイドカフェなんかが入った複合施設ビルで、萬松寺はその向かいにあるお寺、って認識しかなかった。そんなに歴史深いお寺だったんだ。
シーシャ屋さんでまったり
「あ、思い出した」
スマホ片手に猫背で歩いていた彼が急に背筋を伸ばして言う。
「水煙草のお店行こ」
「いいよ」
私は呼び出されて着いてきているだけなので特に意見もない。
「迷わずいけそ?」
ちょっと意地悪を言うことくらい許されるかな。
「誰が迷うかぼけかす」
3倍くらいのカウンターを返された。全く怒ってないくせに。口が悪すぎる。
アーケードや大通りを離れ、路地裏、家と家に挟まれた小さなお店。
『sheesha cafe kemuri』
扉が開くと、ふんわりと甘い香りが鼻をくすぐった。
店内では最初に飲み物とシーシャの台数、好みのフレーバーを質問された。
「よく分からないのでおまかせで」
「通ってるのかと思ったら違うんだ」
「全然知らん。けどせっかく一緒だからこういうところにも来ておこうかなって思っただけ」
予期せぬデレはいつだって心臓に悪い。
そして本人がそれを“デレ”だと認識していないのもタチが悪いの。
2階席は階段をあがったところで靴を脱いだ。
暗めの照明、低い座面、たくさんのクッション。
店内にはWi-Fiも飛んでいる。
「居心地すごくいいね」
「そう?ならよかった」
大須で歩き疲れた後に、シーシャをふかしながらのんびりと過ごす。
思い返してみれば立派にデートだ。それも割とそれっぽい感じの。
シーシャを持ってきてくれた店員さんが、ふかし方を丁寧に説明してくれる。
言われたとおりにやってみれば、果実の香りが口の中に広がった。
「甘いねー」
「っそ、ゲホッ!そう?」
なんでむせてるんだこの人。
「結局なんのフレーバーだったか聞くの忘れてたね」
「全然忘れてた」
「また行こうね」
「またがあればね」
意地悪なことを言うときほど嬉しそうな表情になるよね。私は知ってる。
帰り道、ピンク色の猫の服を着た人はずっとスマホを眺めながら猫背で歩いてる。
唐突に呼び出された割には、結構充実したデートだったような。いつもが何もなさすぎるような。
でも飾り過ぎない時間を共有できるこの街は、とても過ごしやすいなと思う。
「ねぇ」
私は彼の背中に声をかける。
「また、名古屋の歴史について教えて」
私なりの“デレ”だ。
「嫌ですよ、めんどくさい」
ほんの少し笑顔になったこと、私は見逃してませんよ、っと。
はい!以上です!
前回は“名古屋城”っていう場所を決めたデート先だったからこそ、今回は雑に“街歩き”って感じにしたんですけど、どうでしたかねぇぇぇ???
大須、本気で紹介しようとしたらそれだけで4回分くらいになると思うんです。
射撃場があったり、美味しそうな団子があったり、ライブハウスがあったり、オタク文化があったり。
特に目的を持たずに散歩してみるのをオススメします。
きっと訪れる度に目新しい発見があると思うんですよね。
ではまた。
大須観音
http://www.osu-kannon.jp/
住所:愛知県名古屋市中区大須2-21-47
電話番号:052-231-6525
開園時間:10:00 ~ 16:00
萬松寺
http://www.banshoji.or.jp/
住所:愛知県名古屋市中区大須3-29-12
電話番号:052-262-0735
開園時間:10:00 ~ 18:00
sheesha cafe kemuri
http://kemuricafe.com/
住所:愛知県名古屋市中区大須2-13-34
電話番号:052-201-2280
営業時間:12:00 ~ 22:00
(※掲載内容は2018年4月時点のものです)