5歳さん嫁非公認コラム Episode:20「じゅん君、卒園おめでとう」
ちょっと奇抜な奥さまと元気な息子さん達とのユーモラスなエピソードが大人気!ツイッター界随一の恐(愛)妻家 5歳(嫁公認アカウント)さんのコラム!
今回は、卒園式を迎えた息子さんと大切なお友達に思いを馳せて…
親父愛溢れる、子育て世代へのエールをお届けします。
第1章 不安そうだったじゅん君
長男が通っていた保育園に、じゅん君というクラスメイトがいた。
じゅん君は息子と入園も同時期で、卒園までの5年間ずっと一緒に過ごした息子の友達でした。
息子が保育園に入園したての頃、僕が毎朝送っていたんだけど、息子は僕から離れようとせずに毎日大泣きしていた。
それはそうだ、ずっとパパとママと一緒に過ごしてきたのに突然知らない所に連れてこられておいていかれるのだから、そりゃ泣きますよ。
毎朝、息子はこの世の終わりのような顔をして
「パパああああああああああああ!!!!!!」
と泣き叫んでいた。
僕は息子を先生に手早く渡し、後ろ髪を引かれる思いで保育園から毎朝走り去っていたのを覚えている。
同じクラスのじゅん君も泣いていた。うちの息子以上に大泣きしていた。そして大暴れしていた。そんなじゅん君を見て『どこの子も一緒なんだなー』なんて思って、毎朝保育園に響き渡る二人の泣き声を聞きながら仕事に向かった。
そんな時期が2、3か月続いたが、息子はいつの間にか保育園にも慣れて、教室に連れて行くとそそくさと僕から離れてオモチャで遊び始めて、「じゃあ行ってくるね~」と声を掛けると笑顔で手を振ってくれるようになった。
でも、じゅん君はその頃もまだ泣いていた。大泣きして必死に抵抗していた。泣き終わった後も先生にずっと抱きついているか、教室の隅っこにうずくまっていた。他の子が新しい環境に慣れていく中、じゅん君だけはずっと不安そうな顔をしていた。
年中クラスに上がったら、一気にクラスメイトが増えた。息子も友達がたくさんできて保育園に行くのを楽しそうにしていた。お迎えに行った帰りには車の中で「あの子とこんな遊びをした、こんなことを言っていた」と報告をしてくれた。
じゅん君は登園の時に泣かなくはなっていたけど、やっぱりずっと先生に抱きついていた。
年に何回かある保育参加の時、他のパパママ達がクラスのみんなとワイワイ遊んでいる時も、じゅん君はぐずり気味で先生に抱きかかえられているか、部屋の隅っこにいた。
運動会、お遊戯会、クリスマス会、保育園の行事のたび、じゅん君はクラスの子達と離れた所で先生に抱っこされていた。
入園したばかりの園児は、最初は慣れない環境で泣いたり、グズったりします。でも大体の子供はすぐに慣れる。多分じゅん君にとって、たくさんの人がいる保育園という空間はストレスでしかないのだろうなと思った。
第2章 少しずつ、確実に心を通わせていく
年中クラスになって息子がより活発に遊ぶようになった頃、「じゅん君にまた叩かれた」と息子がよく話していた。
じゅん君は、自分の気持ちを言葉にするのが得意ではないみたいで、自分の思うとおりにならないとつい手が出てしまうようでした。息子は不満そうにそのことをよく口にしていた。
確かに息子からすれば、コミュニケーションがうまく取れないクラスメイトに叩かれたら「あいつなんなんだよ!」って怒りたくなると思う。
でも、僕はいままで先生にしがみついて部屋の隅っこにいたじゅん君が、他の子と関わろうとし始めているんじゃないかなと思った。4歳の息子には「じゅん君は一緒に遊びたかっただけなんじゃないかな?今度『あそぼ!』って誘ってあげたら?」と提案してみた。
それからも、時々「また叩かれた」と息子から報告はあったけど、その頻度は段々と減っていって、その代わりに「今日じゅん君とこんな遊びをしたよ」という話をよく聞くようになった。僕は、じゅん君がクラスの子達と仲良くなってきているのかな、とちょっと安心した。
年長クラスに上がったばかりの頃、親子遠足があった。
その日は快晴で最高に気持ちの良い天気でした。絶好の外遊び日和です。
僕は送り迎えも毎日行っていたし、クラスの子達とも毎日よく遊んでいたので、自分でいうのもあれですけど園児達にめちゃくちゃ人気がありました。僕がゆくところに子供達の人だかりができるほどです。
その日もお弁当を食べ終わった後に「じゃあみんな遊ぼうか!」と声を掛けると、「鬼ごっこがいい!」「その次はケイドロね!」「探検したい!」と、子供達がやりたいことを口々に言いました。子供達のリクエストを聞きながら一緒に遊んでいて、ケイドロを始めようとした時でした。警察とドロボウにチーム分けをしていた時に、じゅん君が僕に近づいてきて手を握って
「ケイサツ一緒にやりたい」
と言ってきたのです。
その時、僕は超ぉぉぉおおお嬉しかった。あの警戒心の塊のようなじゅん君が!僕の手を握って!遊びたいと言ってくれた!僕は今までの人生の中で一番本気になって、じゅん君と一緒にドロボウを捕まえた。じゅん君も顔を真っ赤にして、一生懸命クラスメイトを追いかけまわしていた。すごく楽しそうだったし僕も楽しかった。
じゅん君がみんなと遊ぶ様子を見ながら、よその子ではあるが、その成長ぶりを嬉しく思った。
それからも、じゅん君のことを気に掛けていたんだけど、クラスの担任から、毎日じゅん君が給食の時にうちの息子の横で食べたいと言って、他の子にお願いして席を譲ってもらっているという話をきいて胸が熱くなった。
あと、これも先生から聞いたんだけど、じゅん君は2つ年下のうちの次男のことをすごく可愛がってくれているみたいで、次男もすごく楽しそうに遊んでいるみたいでした。
次男にそのことを聞いてみると、「今日もじゅん君が遊んでくれた!」と嬉しそうに答えてくれた。
年長になってからは、じゅん君の笑っている姿をよく見られるようになった。
第3章 卒園〜子供は十人十色〜
そして、先日卒園式があった。
自分の息子だけではなく、赤ちゃんの時から知っているクラスの子達が立派に成長して卒園証書を受け取る姿に、込み上げるものがあった。「こんなに大きくなって、、、」我が子だけではなく、クラスメイトみんなを見ていて、そう思った。
じゅん君の名前が呼ばれて、ちょっと恥ずかしそうに「はい」と返事をして証書を受け取る姿を見て、僕は思わず泣いてしまった。
『じゅん君!君はとっても成長した!よくがんばったね!えらい!』
心の中でありとあらゆる賛辞をじゅん君に贈った。
卒園式の最後には父母が一言ずつ喋る時間が設けられていた。
そして、じゅん君のママの順番が回ってきた。
「じゅんが入園してから、本当に長い間ずっとずっと辛かった。なんでうちの子だけうまくいかないんだ、とずっと思っていました。朝、保育園にじゅんを連れてくるのが辛くて、毎朝暗い気持ちになっていました。本当に辛い5年間だったけど、今日こうやって卒園式を迎えることが出来て本当によかったです。ありがとうございました」
はっきり言って、じゅん君のママの話を聞きながら、僕めっちゃ泣いてました。僕だけじゃなくて、僕の嫁も、先生達も、他のママも泣いてました。みんなじゅん君を応援してたし、成長も見守ってた。でも、やっぱり一番大変だったのはじゅん君のママだし、心配だったと思う。その思いがひしひしと伝わるスピーチだった。
卒園式が終わった後、僕はじゅん君のママの所に行って「じゅん君ホントに成長しましたよね、あとうちの次男がじゅん君にいつも遊んでもらってありがとうございます」と伝えた。
じゅん君のママは嬉しそうに「こちらこそありがとうございます」と言ってくれた。
こんなことなら、もっと前に勇気を出して喋りかければよかったなと思った。でも、最後にちょっとだけだけど伝えることが出来てよかった。
これから小学校に入学して、また一から新しい環境に慣れなくちゃいけないのは、じゅん君にとってとても大変なことだと思う。そして、そのことを一番心配しているのもじゅん君のパパとママだと思う。
じゅん君は息子とは違う小学校だけど、僕はじゅん君のことを忘れないし、めっちゃ応援してる。もちろん、ご両親のことも応援してる。
子供は十人十色で、親はみんな色んなことを悩みながら、心配しながら子育てをしていると思う。ちょっと大丈夫かな?と思ったら、その時は声を掛けて欲しい。
僕は最後の最後に声を掛けたけど、これを読んでいるあなたの一言で気持ちを救えるかもしれないからです。
全国のママ、パパ、応援してます。共に子育てを頑張ろう。
そして、最後に。
「じゅん君!卒園本当におめでとう!君は最高の男の子だよ!」