しんどいオカマのお悩み相談 その32.あがり症でしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回はあがり症で悩む主婦からのお悩みよ。
オカマ仲間がイベントでアイドル歌謡を振り付きで歌うことになって、ステージへ上がる前に「あー、緊張する……!!」って深呼吸してたけど、すでにメイクも衣装も何もかもが恥なんだから、今さら何も緊張することはねぇだろと思いながらも「がんばって」と送り出したの。
【お悩み】
40代、主婦です。
異常なほどのあがり性でずっと苦しんでいます。
小中学生までは正反対で、学年代表の挨拶や弁論大会などに選ばれていたし、むしろ選ばれたくて必死でした。
それが中学生の終わりごろ、クラスのみんなでカラオケに行って歌いはじめた瞬間、一斉に注目を浴び、思ったよりも声の出ていない自分が急に恥ずかしくなったのです。
それ以来、どんな小さな集まりでも、名前を言って会釈をするのが精一杯なほどのあがり症になってしまいました。
ママ友とのお茶会ですら自分のしゃべる番が怖く、保護者会などで発言するのが嫌で、それが原因で2人目の子供を諦めるほどでした。
ネットや本で対策法を調べましたがダメでした。いい歳して本当に情けなくて、子供の見本にもなれず悲しいです。どうか助けて下さい。
あがり症の自分を否定しなくてもいいんじゃない?
アタシもずっとあがり症で悩んでいたのよね。
「オカマがあがり症?」なんて不思議に思ったでしょう。アタシ自身もそう思うんだから、人生わかんないものよね。
昔は営業マンだというのにお客さんの前で手が震えていたし、プレゼンでは声が震えてしまって仕事にならなかったのよ。
アタシが人前であがってしまう原因はふたつあったわ。
ひとつは、昔のアルバイト先がめちゃくちゃブラックでね。
「お客様は神様なんだからお前ら従業員はゴミクズ同然」という社風で、「ミスをしたら上司に殴られる」という恐怖で、お客さんや他の従業員と普通にお話することすら怖くなってしまったの。
もうひとつは、新卒で入った会社でプレゼンの練習をしていたのだけど、それを見た上司から「プッ、そんな張り切らなくていいから(笑)」「いや、社内向けのプレゼンなんだから"様"とか付けなくていいから(笑)」なんてバカにされ続けたのがトラウマになってね。
アタシの話はバカにされて当然なのだと思いこんで、人前では萎縮して何も喋れなくなってしまったのよ。
そういった惨めな思いの反動から、夜な夜なオカマとして歌って踊って、酒をかっくらっていた時期があったの。
オカマという人格でいれば、自分ではない自分になれるから楽だったのよね。
いつの間にか、オカマである自分だけが本当の自分になってしまって、男として昼間に仕事をしている自分は世を忍ぶ仮の姿になってしまったのよ。
そうなると、普段の自分は、自分であって自分ではない存在となって、何が起こっても大して動じなくなってしまったのよね。
今ではどんな大人数の前でも緊張せずのびのびとプレゼンや講演ができるし、お客さんの前でも常にニコニコと余裕のある対応ができるようになったわ。
一見、あがり症が改善して生きやすくなったようにも思えるけど、幼い頃から育ててきた自分の心が死んでしまっただけなのよね。
死んでしまったから、傷つくこともなくなってしまった。あがり症のときよりもずっと、自分が嫌いになってしまったわ。
アタシの場合はわかりやすく人間関係の恐怖からあがり症になってしまったのだけど、相談者であるあなたの場合は、自分が自分自身に対して恐怖心を与えているようね。
でも本質は同じよ。いつも見えない恐怖に押しつぶされそうになっている。
ただ、それはまだ心が生きている証拠だわ。
人前で堂々と振る舞えることは確かに理想的だけど、あがり症を無理に治そうとして、今の自分をないがしろにすることだけはやめてあげてほしいわ。どうか、心を殺さないでいてあげてほしいの。
あがり症を克服するにはどうすればいいのかしら?
一般的に、あがり症を克服するためのアドバイスといえば「場馴れしていないだけだから、数をこなしなさい」とか「その場にいる人達をジャガイモだと思いなさい」みたいなものよね。
ただ、場数をこなすにしても、そこまで頻繁に人前でしゃべる機会があるわけではないし、他人をジャガイモだと思えるほどの妄想力があれば、そもそも対人関係で苦労をしないと思うの。
アタシも世の中の男性がみんな短髪・ヒゲ・筋肉質のイケメンに見えるほどの妄想力があれば、10年以上前から定期的に連絡をよこしてくる「死にたいよ」「もう無理だよ」「最後に会いたい」が口癖のオッサンともとっくに恋仲になっているはず。もう無理なのはこっちだって話よね。
他によく耳にするアドバイスといえば、「誰もあなたのことを気にかけていないから、堂々としていなさい」というものもあるわね。
これは、アタシも一部には同意できるわ。
たとえあなたがあがり症であったとしても、そうでなかったとしても、誰も大してあなたのことを気にかけてはいないのよね。あなたがあがり症の他人に抱く感情と同じよ。
であれば、あがり症は、無理に治そうとしなくてもいいと思うのよ。
誰も気にしていないのならば、症状が出たからと言って何か実害が発生するわけではないからね。
旦那さんやお子さん、仲の良い友人のような、慣れた人と一対一や少人数で話すことが問題ないのであれば、日常生活にはそこまで支障はないはずだわ。
ただ、問題はママ友同士のお茶会よね。
これに関しては、ママ友の一人ひとりと打ち解けて、徐々に慣れていくしかないわね。
結局あがり症って、「自分の一挙手一投足を気にかけている人がいるのではないか」という妄想から生まれるものだと思うのよ。
だから、もしもその場の全員が慣れ親しんだ人であれば、緊張することもなくなはずなのよ。
たとえば普段からリラックスして話すことのできる旦那さんやお子さんのクローンが10人いたとしても、彼らの前で話すことは別に緊張しないわよね。……実際にクローンが大量にいたら別の意味でかなりの緊張感はあると思うけど、たとえ話だからね。
人間を全ではなく、個として他人を捉えてみてちょうだい。そうやって少しずつ、妄想から自分を切り離していけばいいんじゃないかしら。
諦めるのもひとつの手だわ
保護者会みたいな大人数になれば一人ひとりと時間をかけて打ち解けることなんて到底できないけど、そこまで頻繁に起こるイベントでもないのが救いよね。
アタシも「死にたい」「もう無理だよ」「最後に会いたい」が口癖のオッサンから死にたくてもう無理で最後に会いたい旨のメールが定期的に来るのは本当にうんざりしているのだけど、頻度が低いからなんとか我慢できているわ。
だから、あなたも無理にあがり症を治そうとせず、たまにある大人数の前での発表の場は、傷口のうずきのようなものだと思ってやり過ごせばいいのではないかしら。
確かに苦しいものではあるけれど、その苦しみはずっと続くものではないからね。
「私はあがり症なんだ。でも、それだけ」
そうやってあがり症の自分とその状況をありのまま受け入れてあげることによって、少しは楽に生きられるのではないかと思うわ。
さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
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