サラリーマンのオレが諦めた夢の続きを見てみたくてアーティストにインタビューをしてみた 第3回 ~『有島コレスケ/四本拓也 from スズメーズ』TOKYOシティ・ボーイズ・ラプソディー~

2018/03/06 UPDATE

0. Netflixのデビルマンみました?

アイスム読者のみなさん、こんにちはDEVILMEN a.k.a MENSANSです。
先日Netflixでみたデビルマンにインスパイアされてアカウント名を変えました。


というのはウソで、会社の飲み会で自分のアカウント名を呼ぶ声が聞こえたのでアカウント名を変えました。ともあれ素晴らしい作品です。デビルマン。


好きなもののLINKを張るだけで簡単にそれを誰かにshareできてしまう世界がやってきたわけですが、僕たちが高校生だった頃はもっともっと何かを「好き」になる、「好き」でいることが不便で、そして趣味はクローズなものでした。


限られた情報を求めて雑誌を読み漁って、地元のTSUTAYAでボロボロのCDを探し、繁華街のTOWER RECORDでサイゼリヤのドリンクバーをケチって貯めたお小遣いを崩してやっとの思いで音源を手に入れる。家に帰ってコンポで再生しながらMDに録音して……


そんな風にコソコソ大切にはぐくんだ自分の感性が、誰かに届けばいいな、届くはずだ、届かないわけがない。そう思って楽器を手にして音を出してみると、自分は何か、特別な価値観をもった人間になった気がしたものでした。


表現で生きていくことを諦めてしまった一介のサラリーマンである僕が身の回りのアーティストに突撃するインタビュー記事第3回目。今回はそんな多感な時期に出会った同世代のバンドマン、有島コレスケ/四本拓也(from スズメーズ)さんに話を聞いてみました。

1. TOKYO・シティ・ボーイズ・スズメーズ

元気でした?こうやって話すのって10年ぶりくらいだよね……あの頃まだ新宿motionが出来たばっかの頃だよね。


急だな!元気ですよ、毎日面白く生きてる。10年(笑)


どうでしたか。10年間。


10年間語る?それはもう色々あったね。その頃やってたスズメーズと今やってるスズメーズ全然違うからね。初期のメンバーはもうほとんど残ってないね。スズメーズ、ドラム死ぬほど変わってるからね。


くるりみたいだね。


そう。くるり症候群。てか、インタビューの話聞いた時、俺メンさんがメンさんであることを知らなかったからね。正体知った時、え?あのsupremeのTシャツとか着てた?みたいな驚きがあった。


メンさんはstudent a[1]唯一のストリート系ですからね。


(笑)


てか知り合った頃、君ら最初すごく感じ悪かったよね?


いやいや、怖かったんだよ、当時スズメーズが。


なんで!こんなにポップなのに!インタビューでお揃いのパーカー着て来ちゃうくらいなのに!


僕らやっぱり千葉からおのぼりでやって来たから東京シティ・ボーイズにコンプレックスがあって…


そんな意識、あるの?同い年で?


あったね。東京シティ・ボーイたちにやられんぞ!みたいな恐怖が。東京のバンドマン何考えてんのかマジわかんなかったし…。千葉と東京って本当に10年間くらいの文化の差があるのよ。2005年にまだミクスチャーロックとか流行ってたんだよ?そんな辺境の地から出てきてるし、ただ話すだけじゃなめられる……って、なったわけ。



1 メン氏が学生の頃にやっていたバンド。吉祥寺~下北沢で精力的活動を展開し、2009年無期限活動休止。

2. 自分が子どもの頃よかったと感じたものを超えるものは少ない

スズメーズはいつからはじまったんだっけ?


はじまったのは2000年だよね。高校生の頃かな?オレとエミル[2]が中学生の時にバンドをはじめたのがきっかけ。ガチンコでいうと1期生。


俺フジノくらいだな。3期生の。


ガチンコファイトクラブ、Netflixでもう一回やったら絶対に面白いよね(笑)。
それはさておき、音楽を音楽として認識しはじめたのっていつぐらいなの?ファーストインプレッションというか……自分が音楽好きだなって感じた瞬間って訪れるじゃないですか。僕はたぶん父親の車の中でかかってたB’zのLOVE PHANTOMとかなんじゃないかって思うんだけど(笑)。


しいていえばゲーム音楽かなぁ。聖剣伝説とかね。3枚組のサントラ持ってたし。


僕らが小学生の頃って、小室哲哉全盛期だったじゃないですか。そういうのは聴かなかったんだ?


あんまり聴かなかったねぇ。SMAPは聴いてたけど。親が聴いてるジャンルが幅広かったから、ジャズとかクラシックもけっこう聴いてたかな。


俺、家で音楽がかかってたことがない。レコードとかCDを再生するデバイスが無かったからずっとテレビから吸収してた。ミュージックステーションとか、うたばんとか、Hang-outとか?


Hang-out(笑)。B-DASHとLONG SHOT PARTYのCMがクソほど流れてたよね。


あとはbuzz songs出したくらいの時のDragon ashが好きだったかな。


好きだったねぇ。COUNT DOWN TVでマイクを逆さにしてね。みんな指にラバーリング8つくらいつけてたもんね。


あったなー!イケてるやつがしてたわ。完全にアラサー向け懐古厨……


自分が子どもの頃よかったと感じたものを超えるものは少ないからねぇ。


2 三浦エミル(現 sheeplore ギター・ボーカル)さん

3. 徹頭徹尾のオリジナルスタイル

スズメーズはコピーバンドってやってた?


コピーはしたことないね。最初からオリジナルだった。コピーが嫌で最初のライブ2曲しかやらなかった。


コピーが嫌で?なんでそんなにオリジナルにこだわったの?


恥ずかしかっただけだよ。スタジオの中で遊びでACIDMANとかやってたけど(笑)。人前で出すものがカラオケってどうなの?ってプライドが邪魔して出来なかったんだよね。今は全然やりたいけど(笑)。


スズメーズをやりはじめた時はどういうものを世の中に出そうと思ってたの?


当時はエミル君と四本が決めてたところあるからオレはしらない。2人の感性が混ざりあって曲が出来てたと思う。


四本世界観だったよね。バンドのことは当時も今も正直全然わからなかったけど、四本世界観が作成してた。


四本は詞がいいからなあ。詞が良かったからやってたみたいなところはある。


なぜか自分の世界観には強烈な確信みたいなものがあって、25、6歳の頃、スズメーズが活動停止してる時、自分の方が良いはずなのに、他の誰かの活躍を見てるのはつらかったなぁ。


バンドマン以外の表現の仕方の可能性はあったの?


絵でしょうな。二十歳くらいの頃からずっと。今も仕事になってるし。君らが目にしているものも、多分、だいたい俺がやってる。スズメーズのスズメの絵とか。これも。


これすごい可愛い。だんだん欲しくなってくる。


でしょ?通販がね、はじまりました。完全受注生産。色はこれしかないんだけど。


4. みんなが思うほどバンドマンは美しくない

スズメーズを通してこれを伝えたいんや!みたいなのはあるの?


ない。社会派じゃないから。てか、そもそも社会経験がないから。言ったとしても説得力が出ないし。世に出てもいねえのに。


職業体験行く中学校3年生が、メンさんとさ、我々に話聞くのどっちがいいかって言ったら……ねぇ。オレ達に聞いたところでみたいなところあるでしょ。


そりゃそうだ(笑)


でも続けてるからにはさ、なにか強い理由があると思うんだよね。どういうモチベーションで続けてるの?


みんなが思うほどバンドマンって美しいものじゃないと思うんだよね。部活の延長が、今まで続いちゃってるだけだから。改めて腰を据えてバンドやっていこう、とかそういうことがあったわけじゃなくて、ずっとやってるだけなの。


普通に就活して、サラリーマンになることは考えなかったの?


なかったねー。中学生くらいの時にもう決めてたからね。エミル君と「これでいけたらええなぁ!三浦君!」って、ブタメン食いながら夢を語ったよ。ロックスターはうめえもん食えるとおもってたんだよな。中学生にしては楽器上手かったんすよ。苦労もせずに上達できた感があって、あれこれいけんじゃね?これいけるっしょ、余裕っしょ、と思ったね。それが間違いだった(笑)。


俺もその頃何にもしなくてもなんとなく19くらいでBoonとか載ると思ってたもんよ。


そもそもBoon自体廃刊しちゃったもんね。僕もsmart載ると思ってた。僕も中3でドラムやってて、他にやる奴いないからチヤホヤされるじゃん?で、いけんじゃね?みたいな。


大事だよね。その、いけんじゃね?大事だよ。それがこう、俺たちは未だに続いてんの……


だから、いけんじゃね?をずっと持続させ続ける何か特別な思いがないと、無理だと思うんだよね。


違うよ。いけんじゃね?が持続しない人の方が何かがあったんだと思うよ。結婚したりとかさ、親のこと気にするとか。我々はきっと失うものがないので学校辞めたり出来るだけであって。君の方があった、あの時、きっと、失ってはいけないものが。


なんだろう…あったのかな。


守るべきものがあったわけだよ。

5. 二十歳の頃はずっとイライラしてた。誰かに対してというわけでもないのに

アイスムの記事、くるりの岸田さんが言及してたよね?ストレイテナーの大山さんの記事。あの記事すごかったね。噂には聞いてたけどあのエモい話。


「拝啓、ハタチのわたしへ」ね!これも読んでくれるといいね(笑)。岸田さんが読んでくれたら一回だけドラムやらせて!ってお願いしてオレもサラリーマン辞めるわ。


二十歳の頃はずっとピリピリしてたなぁ。


何にピリピリしてたの。


いやなんかもう、あの時期ってみんなピリピリしてない?俺、就職するわみたいな人とか出てきてる時に、ライブハウスのノルマ払ってさ。音楽やめる人も出てくるし。なのに、自分も結果が出せているわけじゃなくてさ。誰かに対してとかじゃないけどずっとイライラしてた。この30歳になってからのハッピーさたるや。


(笑)たしかにノルマ払うのキツかったよね。かといって疑問にも思わなかったもんな。


みんなでバイトして7000円貯めて、ライブ出て、それでスタジオ代も払ってんだからよくやってたよね。やってるうちにオレ何やってんだろってなるのに、そんな生活何年も続けて。


あれはね、確かに精神的にくるものがある。


ライブしててもThe band apartみたいって言われるし。ちゃんと違うもの作ってるのに、伝わってねぇんだなって。


なるほどね。当時全盛期だったもんね。The band apart。でもなんかさ分類するものがないと、人間って不安になるからだと思うよ。脳のキャパシティーを超えたものって全体像を捉えられないからさ。スズメーズを認識しようとした時に、ちょうどその人が引っかかったのがバンアパだったんだよ。


なるほどね。


売れるバンドっていうのは引っ掛けるポイント作るのが上手いんじゃないかな。あまりにもそれっぽいわけでもなく、ちょっとのオリジナリティがあるみたいな。ギリギリ、ギリギリの、言語化できるレベルの前衛性みたいな。完全に不可解なものってやっぱり捉えられないから。


さすが。さすがメンさん。そういうとこだよなぁ。


6. 金がないとやらないくらいならもうバンドやめちまえよ

今後はどうしていくの?スズメーズは何メーズになるの?


普通のインタビューみたいなこと言いますね。聞く?そんなこと聞く?


どうするも何も……ムズいな……スズメーズEXみたいな?


リアルなところだと、シシャモと対バン。めっちゃなんかこう、いい感じの距離感にある目標。


そんな急にミュージックステーション出たいって言ってもね、いまいちイメージ湧かないから。まず実現できそうなやつをやりたいよ。


今のが続けられるだけでも幸せじゃない。


まあそれはあるよね。目の前のことを一生懸命やる。そんな狡い考えできないですから私。


かっこいい、一番いいやつ。


有島さんには演奏しかないんすよ。会社的には全然ダメなんすよ。


別に自分のCDが売れなくていいと思ってる。Apple Musicで聴いてくれれば万々歳。曲聴いて「良かったよ」って言ってくれるくらいが一番うれしい。変にお金が絡むと、アーティスト側がCDを買わないとバンドは解散してしまうみたいなことをほざくようになっちゃうわけですよ。


ハァーン


金がないとやんないくらいならもうやめとけって。サラリーマンやれって思う。中途半端だよ。そういうの。


そうそう。僕らはバイトしてでも好きなもの作りたい派なんで。極論もう、作るまでで終わってるんですよね。まぁ、レーベルからしたらね、こっちがお金かけて作らしてやってんのに、もうちょっと売れる努力をしろとは思うよね。


売れるためにこうしましたみたいな、インタビューで言うバンドとかいるやん。それはちょっと引いちゃうな。おじさんは。しかもそこをなんか周囲も評価するじゃん、あのバンドは上手いことやってる、みたいな。


これは良いもんだって作ったものが結果的に売れるのがいいよね。バンドもサラリーマンも。


作家の人とかも漫画家の人とかも言ってますよ、結局、おもねらずに、自分のやりたいことだけを貫いてやるのが一番良いって。それで人が離れようが。バンドマンが自撮りする問題もそこですよ。


何その問題。


バンドマンの自撮り需要はあるじゃないですか。でも、それは本当にやりたかったことなのかよっていう。


有島さんもやりゃ反応あるけどね。


絶対嫌です。恥ずかしいじゃないですか、そんなの。自撮りは恥ずかしい、他撮りは別に気にならないけど……


どういう気持ちでのせるんだろうね。


ワーキャー言われるためでしょ。営業だよ営業。あとは下心半分。


ハァーン……


ワーキャーいわれるの羨ましいとは思う。俺も絶妙に売れてないアイドルにフォローされたいもん。それくらいのモテが一番人生を豊かにするからね。ツインテールでカラコンしてマスクした女の子連れて歩きてぇじゃん。


それくらいだね。それくらいのモテが一番いい。絶妙に人生を破壊されないレベルのモテ。うらやましいよね。ミスiDとインターネットでいちゃこらする人生。決めました。2018年の目標。ミスiDとオフ会。


でも実際やっちゃったらダサいっすよ。31にもなって二十歳そこらのインターネットで有名みたいな、カラコンの女の子とね、チャラチャラしてる場合じゃないっすよ。いるけどね、そういうバンドマンとかも。俺はちゃんと結婚したいよ。


はい。すみません。


俺もメンさんに、「あ、嫁です」って紹介したいよ。Studio Coastで。結婚できるってのはやっぱりある程度、仕事がある状態なわけじゃん。音楽活動はやっぱりサラリーマンに比べれば不安はつきまとうので、それが出来るくらいの生活を出来るようになるのが目標です。


それに尽きる。生活をしっかり。


生活をしっかり。まあ関係ねえかもしれないけどな、俺が結婚できねえの。


まあ、そうだね。


人間性かもな。


有島くんと結婚したい女の子いっぱいいると思うけどね。結婚に何を求めます?


心の安定。ミスiDとかやってる場合じゃねえ。


そう。可愛い!とか言ってる場合じゃない。

7. 多様性を受け入れてください。いろんな意味で。

最後こう、世の中に言いたいこととかあればお願いします。


多様性を受け入れてください。


いろんな意味で。いろんな方面において。


いいね。多様性を受け入れられる社会にしていきたいよね。スーツ着て満員電車乗ってるおじさんたちをいかに減らしていくかとか、そういうテーマでがんばりたい。


え、殺人予告?


いやいや(笑)。それをやることが偉い、みたいな価値観が気に入らなくてさ。朝起きて、スーツ着て電車乗って会社行って、会議で―時間座って帰る。で偉いっていわれるの。じゃあなんかあんた世の中にしたんでしたっけ、っていうことを問いたい。だったら、ミスiDの女の子の方が世の中を幸せにしてる。支えていきたくなるじゃん。


わしら男性地下アイドルも支えていただきたい!


男性地下アイドルスズメーズ。ポストKinKi Kidsみたいな。意外といねえんだよ。なんでもっと注目されないのかなぁ。四本の正直しんどい、やりたいよね。


中川家とYOU呼んでやりたいよね。


今年の目標だね。今日はありがとう。


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スズメーズのライブに行くと、ただただまっすぐなベクトルで向かってくる音の塊を感じる。
ライブの迫力は聴こえる音量ではなくて、1音あたりに込められた感情の密度で決まるのだと思うことが出来る。他の誰のためではなく、金を稼ぐためでもない。ただ自分が自分のために自分の手で作り出した表現が持ちうる強力なベクトル。スズメーズのライブにはそれがあるように思う。

ではまた。

投稿者名

MENSANS

大手外資コンサルティング企業に勤める32歳。一児の父。
『元・激務界の貴公子』という異名を持つ。
強靭な体力と精神力を誇るが、アルコールからの誘惑にはめっぽう弱い。
論理的な風を装うがその実、好きなマンガは「るろうに剣心」「幽遊白書」「ジョジョの奇妙な冒険」という、ジャンプを愛しジャンプに愛された熱血ビジネスマン。
Twitter:https://twitter.com/uudaiy