しんどいオカマのお悩み相談 その30.生き方がわからなくてしんどい?

2018/03/05 UPDATE

しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回はどう生きればいいかわからなくなってしまった女性からのお悩みよ。
AIが人間の適正を分析して生き方を決めてしまう世界をディストピアとして描く映画やドラマをたまに見かけるけど、それって生き方がわからない人間にとっては完璧なユートピアよね。
ただ、AIはオカマを処理すると何かしらのエラーを吐き出しそうよね。

【お悩み】
21歳の女性で、風俗嬢です。
去年の4月、新卒で病院に就職しました。20歳にしてはそこそこのお給料で、手取りで17万円もらえました。
しかし、毎月その中から親に12万円を渡し、自分は残りの5万円で生活していました。
親にお金を渡す理由は、父は亡くなり、母は浪費が激しく、姉は結婚したため、私しかいない中で家の借金を返さねばならないからです。
もっと、もっと、と稼ごうとするうちに風俗嬢になっていました。

私は、借金が返済できる23歳のときに死のうと思っています。
最近はもう、男性に対して好きとか嫌いとか、体を重ねることの意味も感じなくなってしまいました。
それでも、家に迷惑をかけることや自殺の後遺症について考えると弱気になってしまい、つい、生に希望を抱いてしまいます。
これからどう生きれば、何を支えに生きればいいですか?
私はもう、泥に浸かったみたいに身体が動きません。

即物的な考え方はやめたほうがいいわ

あらやだ。今の仕事を続けているうちに、本能的な体の愛だけでなく、精神的な愛すらもその意味がわからなくなってしまったのね。
人が生きていく上で愛情の授受というのはもっとも幸福感を得やすい心の動きでしょうから、異性に対して何を思うでもなくなってしまったというのは、とても虚しく、苦しいことよね。
その上、男性と体を重ねることで様々なリスクを背負いながらお金を稼ぐ理由は、「家族の残した借金のため」でしょう?
これでは生きる意味を見失って当然だわ。お金って、本来は自分が幸福になるために稼ぐものだから。
同じ経験をしていないアタシにはどうしたってあなたのしんどさを完全に理解してあげることはできないけど、今、あなたが何も見えない、何も聞こえない深海のような孤独を生きていることだけはよくわかるわ。

あなたにとって一番良い生き方は、家族を捨て、仕事をやめて、すべてを捨て去って生きることよね。
でも、生一本な性格のあなたは、とても心を鬼にして家族を捨てることはできないのでしょうね。
もしも家族も捨てず、今の仕事もやめない道を選ぶのなら、少しだけ今の生き方に対する考えを変える必要があるわね。

アタシはね、誰かと体を重ねること自体に、必ずしも特別な意味を持たなくてもいいと考えているの。
そうね、「日々のなかにあるスマイルを発見!!」という超ハッピーなコンセプトのサイト、アイスムさんに掲載される記事だから少々オブラートに包んで言うのだけど……ゲイ業界の人たちは、はじめましてから即ホテル、という刹那的な関係を持つことが往々にしてあるのよ。そういった関係は男女間よりも多いように思う。
男同士だと欲求のみを追求した関係を築きやすいからね。よく言えばサッパリした関係、悪く言えば……ごめん、これはもはやオブラートに包めないから言えないわ。
彼らは、誰かと体を重ねることに対してほとんど心が動いちゃいないの。あとに残るものは何もないと無意識にも考えている。
もちろん、すべてのゲイがそうではないのよ。純粋に恋愛をした中で、恋人との関係を少しずつ築いていく人だってたくさんいる……ということは念を押して言っておくわね。

体を重ねることの意味は、その時々の自分が決めていいことで、自分にしか決められないことなのよね。
お客さんはお客さんよ。将来あなたが好きになる人や、大事に思う人とは少しも関係がないのよ。
今あなたが感じている虚しさと、いつか出会うであろう恋人に感じる気持ちは完全に切り分けて考えなければならないわ。
もちろん、行為によるリスクは女性側のほうが断然大きいし、あなたが仕事をする上で日々心に負っているものをアタシが知ることはできないから、「はい、そうですか」と一筋縄で現状を割り切ることはできないかもしれない。
だけど、何もかもを十把一絡げにして考えて絶望することだけはやめてほしいの。どうか少しだけ、考え方を変えて生きてほしいのよ。

60年後に死んでも、明日死んでも同じだけど……

オカマの友人が言っていたわ、「死から逆算すれば、60年後に死ぬのと、明日死ぬのは同じだ」と。
人間を含めた生物がこの世を生きる理由なんて、突き詰めれば何もないわ。
幸福な人生かそうでないかなんて、ほんのわずかな脳内物質が決めていることよ。意味のある人生かそうでないかなんて、死ぬ直前の自分自身か、自分が死んだあとに誰かが勝手に理由をつけるだけ。
世の中に必ずしも必要な人間なんていないのだから、アタシやあなたがいつ死んだとしても、誰かの手を少しだけ煩わせて、そして土に還るだけだわ。
だから、60年後に死んでも、明日死んでも同じなのよね。そこに何の希望もなければ。

マハトマ・ガンディーの言葉に「明日死ぬと思って生きなさい、永遠に生きると思って学びなさい」というものがあるわ。
これは確かに、確かに素晴らしい言葉よ。
ただ、ガンディー兄さんには悪いんだけど、アタシたちみたいな非・非暴力を貫いて生きているような人間は、とてもこんな高尚なことを考えて生きられないと思わない?
こういう言葉を実践できるのって、ベンチャー企業の若手社長とか、「人生は”やるかやらないか”!」みたいな、すっごいぼんやりしたフレーズをダブルクォーテーションで意味ありげに囲ったコピーが売りのFacebookでしか見かけないセミナー講師くらいだと思うのよ。
アタシはね、ガンディー兄さんとは真逆のことを考えながら、かろうじて毎日を生きているの。

「明日だけでも生きてみよう、永遠はないと思って学ぼう」

あるマラソン選手は、次の電柱まで走ってみよう、それを超えたらまた次の電柱、次の電柱、と思って42.195kmを走りきるらしいのよね。
それと同じで、もしあなたがほんのわずかでも生に希望を抱いて生きているのなら、明日だけ、明日だけと思って生きてみるのもいいんじゃないかしら。
そして、その短い生を無駄にせず何か新しく物事を学ぶことで、その中に生きる希望が見つかるかもしれないわ。何もしなければ、このまま絶望にまみれてしまうのは明白よ。
死ぬ理由になる絶望は、生きる理由になる希望で上書きすることができるのよ。

自由の中にこそ希望があるわ

あなたには、きっと他にもここでは書けない様々な事情があるのでしょうね。
それは絶対にあなた自身の責任ではないし、かといってすべてが親や周囲の人間の責任というわけでもない。その境目であなたは苦悩し、迷っているのだと思うわ。
でも、その苦悩と迷いは、自由になったあなたには全く関係のないことなのよ。
自由を手にしてからようやく、誰の責任でもない、あなただけの人生が始まるの。だから、いつか自分の人生を生きてほしいのよ。本当は今すぐにでも。
その中で、どうか希望を見つけ出してほしいわ。

さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
送り先は、アタシのツイッターアカウント(@BS_dim)のDMか、メールフォーム(okama.onayami@gmail.com)まで。
【お悩み相談内容】と【年齢、性別、職業など簡単な自己紹介】を忘れずにね。いただいた相談内容、個人情報はこのコーナー以外では利用しないし、長期的に保管することもしないから安心して。
また、このコーナーに関するご意見やご感想もお待ちしているわ。とっても励みになるから、気軽に送ってもらえると嬉しいわ。よろしく。

投稿者名

BSディム

夜な夜なネオン街をねり歩くアラサーのオカマ。
昼間は真面目な係長だが、退勤から3駅で夜の帳をドレスに変える。
中学2年生で周囲にカミングアウトし、以後オカマとしての人生を歩む中堅オカマである。
Twitter:https://twitter.com/BS_dim Blog:http://aiokama.hatenablog.com