しんどいオカマのお悩み相談 その29.頑張ることがしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は頑張ることに疲れてしまった男性からのお悩みよ。
やっだわかるわ、アタシも最近は「体育会系イケメンノンケと付き合えないんじゃ頑張っても意味がない」と考えるようになってしまって、何事にもやる気が出ないの。
努力の方向性をどこに定めれば体育会系イケメンノンケと付き合えるのか、誰か教えてほしいわ。
【お悩み】
23歳の大学院生、男性です。
就職活動について調べているときにこのお悩み相談を知り、辛かったときに読んで励まされていました。
おかげさまで志望企業から内定をもらい、いち就活生として感謝しております。
悩みは、頑張ることに時々辛さを感じてしまうことです。
大学院ではなかなか研究の成果が出ず、緻密な作業は向いていないのかなと思いながらも、なんとか努力してきました。
しかし、同期が無理なく研究をこなしている中、私は土日も研究室に行き尽力しているのにも関わらず、発表では至らない部分を事細かに指摘されてしまいます。
挙げ句、教授から「君はこのままでは卒業できない」と言われてしまう始末です。
就職活動も運良く終えたのに、もし卒業できず、また就職活動をやり直すと思うと不安で仕方がありません。
努力の仕方やメンタル面の鍛え方など、様々な経験を積んだと思われる方にお聞きしたく相談しました。よろしくお願いします。
意外と努力してるわよ、あなた
世の中にはオカマの中でもプロと呼ばれるオカマたちがいて、彼女たちは「いかにオカマであるか」に日夜しのぎを削っている。
そう、彼女たちは女性としてではなく、オカマとしての道を極めようとしているの。並々ならぬ努力によって。
何年か前に自宅で鼻をほじりながらテレビを眺めていると、オカマバーのママが新入りの若いオカマに新人教育を行う様子を映していたわ。
開店前の店内で、ママが新人に「テメェそれでもオカマかよ!もっとオカマっぽさ出せよ!!」と怒号を飛ばしていた。
アタシから見れば彼女も充分にオカマらしいプロのオカマなのだけど、業界ではまだまだ力不足のひよっこの素人なのでしょうね。
それでも、ママと新人の彼女の目からは、「絶対にオカマを極めてやる」という野望と熱意が感じられたわ。
アタシには1ミクロンも理解できなかったけど。
きっとオカマ業界の底で泥水をすすって生きているアタシみたいなオカマは、彼女たちのようなプロからすると、怠惰の塊のように映るのでしょうね。
だってアタシ、オカマらしさなんて普段は全然意識していないんだもの。
プロのオカマであれば、所作のひとつひとつに、過度にデフォルメさせた女性性を意識するものでしょう?
アタシは言うなればオッサンよ。オカマ言葉を繰り、「マジかよ」「オー・マイ・ゴッド」の代わりに「やっだん……」と吐息が漏れるだけのオッサン。
だけど不思議なもので、相談者のあなたから見れば、アタシは充分にオカマらしい、経験と努力を重ねたプロのオカマに見えるのではないかしら。
逆にアタシから見たあなたは、大学院に入って研究漬けの毎日を送っている時点で、充分に努力をしているように見えるわよ。きっとあなたは謙遜するのでしょうけど。
何が言いたいかというと、同じ努力やそれによって得た能力でも、環境によっては重宝されたり、ぞんざいに扱われたりするってこと。
たとえば掛け算の九九なんて大抵の大人が暗唱できるけど、これが幼稚園児であればほとんど誰もできない離れ業なわけ。7の段はアタシも危ういけど。
努力した先には同じ努力をした人がいて、過去の努力がその環境の常識となるのはどんな業界でも同じなのよ。
相談者のあなたは努力をしていないわけではないの。ただ、その努力があなたの中で当たり前になってしまっただけなのよ。
焦りは禁物、急がば回れよ
あなたは今、確かに努力しているわ。ただ、何のために努力をしているのかわからなくなっているのではないかしら。
恐らく今の研究は志望企業での業務とは直接関係のないものだし、就職活動を終えたあなたが研究を続ける理由は、ただ卒業をしなければならないからに他ならないわよね。
研究って、どのような結果であれ成果として残るとしても、膨大なデータを蓄積するための先の見えない作業が延々と続くから、そもそもモチベーションの維持は難しいものよね。
その上、あなたは同期から遅れをとって、卒業できないかもしれないという不安が常につきまとっている。その焦燥感はあなたをさらに完璧から遠ざけ、研究の価値と意義を曇らせてしまうのでしょうね。
だけど当然、すべてを投げ捨てるわけにはいかないわよね。何もかもが無駄になってしまうから。
研究を続けていくしか道は残されていないのだけど、今のあなたは焦燥感と閉塞感で、冷静に自分や周囲を見られなくなっているのではないかしらね。
なぜ同じ立場の同期が自分よりも上手く研究をこなせているのか、なぜ教授から発表についていつも指摘を受けるのか、その原因について客観的に考えたことがあるかしら?そして、誰かに定期的な助言を求めているかしら?
焦るあまりに、客観的な目線を取り入れることなく、自分自身が努力だけであらゆる問題を解決しようとするのはあまりに効率が悪いのよ。
オカマ業界の底で汚泥を食いながら生きているアタシが仕事について語るのは大変恐縮なのだけど、世の中のすべての作業は効率化の連続で成り立っていると言っても過言ではないの。
作業のための作業を効率化し、効率化のための作業をもさらに効率化していく。さらにその作業も……という風に、最後はボタンひとつで世界を動かせるほどに効率化していくことが理想だわ。
今あなたが取り組んでいる研究も、まさに、先人の蓄積してきた知恵を使い、何かしらの効率化によって解を求めるものよね。
まずは少し立ち止まって、あなたが煮詰まっている根本的な原因の究明を最優先にすべきだわ。
たとえば教授からの指摘がストレートに研究の本質をとらえるものではないことに気づかず、表面的な問題ばかりに目を向けているのかもしれない。それ以前に、教授とのコミュニケーション不足が原因でパフォーマンスが落ちているのかもしれない。
そういった問題をひとつずつ検証して解決していくことで、今後の作業効率もぐっと高まるはずだわ。
作業効率が高まるということは、努力の効率が高まるということ。時間と体力、そして心を浪費せずに済むということよ。
その余裕は必ずや、教授やあなた自身が求める完璧への近道となるわ。
努力は実るとは限らないけど
アタシが数年前にテレビで見た新人のオカマは、今ごろ堂々とプロのオカマとしてお客さんに受け入れられているのかしらね。それともオカマの道は諦めて、どこか違う場所、違う姿で生きているのかしらね。
人生は「やってよかった」「やっておけばよかった」の連続で、あらゆる努力は何らかの形で昇華されるもの。どこかで彼女が自分の人生に満足していることを願うわ。
そう、あえて「報われる」とは書かないんだけど。
相談者のあなたも、数年後、数十年後に自分の人生に満足していたらオカマも嬉しいわ。
どうかそれまで、抗っていてください。
さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
送り先は、アタシのツイッターアカウント(@BS_dim)のDMか、メールフォーム(okama.onayami@gmail.com)まで。
【お悩み相談内容】と【年齢、性別、職業など簡単な自己紹介】を忘れずにね。いただいた相談内容、個人情報はこのコーナー以外では利用しないし、長期的に保管することもしないから安心して。
また、このコーナーに関するご意見やご感想もお待ちしているわ。とっても励みになるから、気軽に送ってもらえると嬉しいわ。よろしく。