〇〇なときは映画に逃げろ!! ~第6回 バレンタインにチョコをもらえなかった時~ 先攻:加藤よしき「バーフバリ(’17年)」
■1 地球上で最も元気が出る映画は何か!?
こんにちは、加藤よしきです。死にそうです。それはさておき、バレンタインですって。そんなわけでして、「バレンタインにチョコをもらえなかった時に観る映画」というお題を頂きました。正直に言って、私はバレンタインにあまり良い思い出がありません。思い返してみれば、中学生の頃だったでしょうか。私は同級生の女子に片思いをしていました。ここでは彼女を仮にAさんとしましょう。Aさんとは辛うじて会話が成立したこともあり、ある程度は仲良くなりました。くだらない冗談も言い合ったものです。当時は私も人間でしたので、バレンタインの日には淡い期待を持っていました。そして当日の朝になって、急にAさんに呼び出されたのです。私は驚き、まさか……と胸を躍らせました。しかし、やや緊張する私に、Aさんはこう言いました。「加藤の友だちのB君が好きでさ。チョコ渡したいから、呼び出してくれない?」その場で膝から崩れそうになるのを堪え、私はB君のところへ向かいました。すると今度は、Bにこう言われたのです。「Aは嫌いだから、断っておいて」……俺はどうすればいいのか?たぶん人生でベスト10に入るくらい悩みました。そして私は、Aにこう伝えたのです。「俺の不手際でBに伝えそびれた。Bはもう帰った。ごめんなさい」そう言って謝る私に、チョコを抱き締めたAは「使えない」と一言。この日のためにどれだけ準備をしてきたか。どれだけの覚悟をしていたのか。その心中を想いながら、「ごもっともです、使えなくて申し訳ない」と、謝る私。とんだピエロです。ひたむきで滑稽な逃亡者ですよ。
B’zの話はさておき、映画の話に戻ります。今回は「バレンタインにチョコをもらえなかった時に観る映画」というテーマですが、こういう時はやはり元気が出る映画を観た方がよいでしょう。では、最も元気が出る映画は何か!?多種ある映画が「元気が出るか?」の一点で競い合ったとき、最強の映画はまだ決まっていない……わけですが、その答えの一端が分かる映画が存在します。それが今回ご紹介するインド史上最大規模の映画『バーフバリ 伝説誕生』(15年)、そして続編『バーフバリ 王の凱旋』(17年)です。
■2 圧倒的スケールで送るスペクタクル巨編、ここに降臨!
先ほど史上最大規模の映画と書きましたが、この表現には一切誇張がありません。本作はインド映画史上最高額の予算を投じ、インド映画史上最高の興行成績を記録した映画です。さらに架空言語を作るなどの緻密な世界観設定に、現代社会にも通じるメッセージ性もあり、それでいて物語は世界各国の神話に通じる超王道なもの。
そんなバットが木っ端微塵に砕けるような超剛速球映画ですから、主人公も当然とんでもない男です。考えてみてください。あなたはナイアガラの滝くらいデカい滝を、筋骨隆々の男が素手でよじ登っていく映画を観たことがありますか?しかも、登っていく理由が「上に何があるか気になるから」ですよ。我が国にもカカロットa.k.a.悟空という大人物がいましたが、それくらいのとんでもない行動力です。およそ常人には及びもつかない思考と体力。まさに生まれついての英雄です。その男こそが本作の主役“バーフバリ”。本作は彼を主人公に、超大国マヒシュマティ王国の王座を巡る血みどろの戦いと、あまりにも悲劇的な名君の死。そして一人の女の執念によって難を逃れた名君の遺児が成長し、己の出自を知って、裏切り者から王の座を奪還すべく死闘へ身を投じていく物語を描いた、壮大なスペクタクル・ロマンです。そして勿論、歌って踊ります。
バーフバリは、少年のような爽やかな笑顔と、獣のごとき美しく逞しい肉体の持ち主です。もちろん見掛け倒しではなく、メチャクチャ強い人です。先にも書きました通り、素手で巨大な滝を登り切り、全長何十メートルはあろうかと言う黄金像を一人で支えてしまいます。おまけに機転も利いて、弱きを助け強きをくじく、心優しい正義漢。1ミリのスキもないナイスガイです。顔も体も心も、全方位で文句のつける余地がありません。「地上最強/最高の男」という概念の実写化は、きっとこんな感じでしょう。中学時代のバレンタインの思い出を引きずる私とは天と地ほどの差があります。感情移入や共感ではなく、ただただカッコよくて憧れる存在。そんなタイプの主人公です。この男に一度でも触れてしまえば、少々の悩みは何ともちっぽけなものに思えてしまうことでしょう。私も中学時代のことは忘れます。32だし。
2)息つく暇など皆無! これぞ酸欠アクションの最新系!
3)「ツッコミどころ」とは言うけれど……。
よくツッコミを「入れる」とは言いますが、それは同時にツッコミを「入れることができる」、あるいは「入れるように仕向けられている」とも言えるわけです。もちろん純粋にミスっている場合もありますが、意図的にツッコミどころを作っている物もあります。映画とは作り手と観客のコミュニケーションでもあります。泣かせたい、笑わせたい、元気にしたい……作り手は様々な思惑を「映画」越しに観客に投げかけます。そして観客が映画にツッコミを入れることも、こういったコミュニケーションの一種です。
■3 こんなでっけぇ映画がある。それでいいじゃないか……。