サラリーマンのオレが諦めた夢の続きを見てみたくてアーティストにインタビューをしてみた 第2回 ~『樋口恭介』マッシュアップ・サイエンスフィクション~
0. 好きなことで生きていけっていうけどさ
アイスム読者のみなさん、こんにちは。メンディーa.k.a MENSANSです。
好きなことで生きていく。最近はそんな夢のような時代が訪れたと言います。
たしかにテクノロジーは進化し、場所を選ばずにできる仕事は増えました。またテクノロジーの進歩に寄り添うように、働き方に対する社会の考え方も、少しずつ、より柔軟になってきたように感じます。
でも、好きなことで生きる、ことのハードルが下がったとは僕には思えない。
なぜなら、好きなことで生きるための最大のハードルは、テクノロジーや環境ではなくて、自分の心の中にあることが多いからです。
好きなことで、失敗してしまったらどうしよう。
自分よりもこれが好きな人がいたら、どうしよう。
好きなことですら、負けてしまったらどうしよう。
そんな自分への不安に打ち勝たなければ、そもそも好きなことで生きていくステージにすら立つことができないのです。
そんなモヤモヤを抱えて過ごしているうちに時間は過ぎる。生きているだけなのにお金は減っていく。とりあえずで入った仕事は辞められなくて、日々なんとなく漫然と、これでいいのかな?と思いながら生きて歳だけをとっていく。
おいおいおい。オレが考えていた人生はそんなに退屈なものだったのか?
誰よりも何からよりも、まず自分から逃げ出した人間が、幸せに暮らすことなんてできるのか?
就職してからもずっと胸に抱えていたそんな問いを、今もまだ、表現活動を続ける友人達にインタビューすることで、明らかにしてみたい。
そして、たとえば今、夢と現実とを天秤にかけて将来を考えている人や、かつて夢と現実とを天秤にかけて、現実を歩むことに決めた人たちの背中を少しだけ押してあげるようなものが書けたなら。
表現で生きていくことを諦めてしまった一介のサラリーマンである僕が身の回りのアーティストに突撃するインタビュー記事第2回目。
会社の後輩でありながら小説家。ダブルワークの末、処女作にもかかわらずハヤカワSFコンテストで見事大賞を受賞した天才作家。さらにはラッパー・そしてノイズミュージシャンとしての一面も持つ、もはや何がなんだかわけがわからない万能天才「樋口恭介」さんに話を聞いてみました。
1. ラッパー・ノイズミュージシャン・コンサルタント「兼」作家のオルタナ野郎
樋口君とはかれこれ5年くらいの付き合いになるけど、はじめて原稿を見せてもらった時、職務経歴書に載らない君のバックグラウンドを全然知らないなぁって思ったんだよね。
きっとこれは読む人が読めばちゃんと評価されるものなんだろうという感覚はあったんだけど、やっぱり処女作で大賞を受賞しているわけだし、しっかりとしたバックボーンがあるってことだと思うんだよね。
ルーツは自分語りになってしまって気持ちが悪いんですけど(笑)言ってしまうとまずは音楽ですね。中学生の頃、思春期の衝動で何かを表現したいと思った時に、当時の自分にとって一番手近だったのが音楽でした。曲を作るために歌詞を書きたいなって思いはじめたのが、物を書くきっかけです。
でも音楽活動では最終的に歌詞の無いノイズミュージックにいきついたよね(笑)。
音楽をやる過程で、途中から言葉と音は分けても良いんじゃないかなと思ったんです。直接的にはMy Bloody Valentineが分岐点だったんですけど、マイブラを初めて聴いた時に、歌詞が全然聴き取れないのにひたすら鳴っている重層的な轟音が気持ち良くて、もう音楽は音だけの快楽を追求してもいいんじゃないかなと思ったんですよね。
もちろん言葉がもたらすエモーションや情景が、音のイメージを変質させたりする場面に出会うことも好きなので、一概には言えないんですけど。
HIPHOPはまさにそういう楽しみに出会えるジャンルでラップを聴くことも好きです。
マイブラに出会うまではNIRVANAやSMASHING PUMPKINSとかを聴いていて、歌詞を理解してエモくなっていました。その辺のバンドは今も歌詞を見ずに歌えるほど好きだし、カラオケで歌っていい詞だなぁと思って泣いたりしますよ(笑)
オルタナ野郎だ。小説を書くにあたって影響を受けた作家はいるのかな?
キリがないんですけど、海外文学だとイアン・マキューアン、ミシェル・ウエルベックが好きで、国内だと東浩紀さん、円城塔さん、高橋源一郎さんをリスペクトしています。自分の作品でもたくさん彼らの作品をオマージュしています。
東浩紀さんはコンテストの選考委員もされていて、処女作は東さんへの一方的な手紙のつもりで書きました。読んですぐにわかるオマージュをたくさんしているので、最終選考に進んだと連絡をいただいた時は「ついに東さんに読まれるのかー…もしかしたら怒られるかなー…」と不安でしたが、結果的には認めていただけて、受賞の連絡をいただいた時はそのことが一番嬉しかったです。
2. 非現実的で論理的?サイエンス・フィクションとはなんなのか?
そもそもの話で本当に恐縮なんだけど、SFの定義ってなにかあるのかな。ガンダムはSFに属するの?
ガンダムについては色々と複雑な経緯があって今も議論があるんですけど、出てきた頃はSFではないという意見が多くて、今はSFであるという意見の方が多いようです。
言ってしまえば、厳密なSFの定義はなくて、時代によって変わります。科学的な根拠がある設定の上に成り立つ世界観で、人類文明に対して批評的な視点を持っているものがSFに位置付けられるのかなと思います。
僕個人の意見では、SFは視点のスケールがとてつもなく大きい所が特徴です。一般文学で扱える時間枠が、せいぜい人の一生分の100年程度の時間である一方、SFは文明や惑星、宇宙の生き死にに関する話を取り扱うので、1,000年や1,000億年といった時間軸で語られることがありますね。とにかくでかいです。
なるほど。誰でも知ってそうな身近なものだとどういうのがSFになるの?
たとえばスターウォーズとかブレードランナーみたいな映画、あとゲームだとファイナルファンタジーはSFになるのかな?
どれもSFだと思いますよ。
スターウォーズは言わずと知れたスペースオペラで、ブレードランナーは原作がフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』で、もはや説明不要のレベルです。ファイナルファンタジーは自分でファンタジーって言ってますし、実際に魔法を使ってモンスターを倒すようなファンタジーの側面も強いので異論もあるかと思いますけど、7は惑星の命を資源にしている社会と企業と陰謀論が背景にあったりとバリバリのSF設定だと思います。
他の作品でも、魔法を使えるのは古代文明のメカニズムがあるからだと説明したり、6は作中で一度世界が滅亡したりするので、明確にポストアポカリプスSF(世界滅亡後の世界を描いたSFのサブジャンル)と言えると思います。
なるほど。そう考えるとSFは意外と身近なんだね。
はい、ほんとにそうだと思いますよ。よく言われる言葉に「拡散と浸透」というのがあります。「SFはいろんなジャンルに拡散して浸透していって、もはや当たり前になりすぎているから逆にSFだと意識されないのだ」という話です。
「拡散と浸透」に該当してそうなSF作品は枚挙に暇がなくて、鉄腕アトムやドラえもんみたいな国民的アニメから、ウルトラマンやゴジラ、仮面ライダーなんかの特撮物も全部SFです。最近はテクノロジーの発展がスピーディでかつドラスティックなので、現実がSFに近づいてしまっているので、もはや普通のリアリズム作品でもSFチックな設定や道具立ては避けては通れなくなっています。
3. SF大賞受賞を可能にしたコンサルティングファームでの職務経験と同世代の活躍
小説を書いたのは今回が初の初になるのかな?
完成できたのは初です。学生時代に何度も書こうとしたことはあったんですけど、最後まで書くことは当時できませんでした。
そうなんだ。今回はどうして書けたんだろうね?
それがよくわからないんです(笑)。でも、書きたいって気持ちに能力が初めて合致した感覚があります。
なるほど。僕らの仕事(コンサルティング)ってけっこう文章書くじゃん?それによって強化されたりした能力があったのかな。
あると思います。特に文章を最初に論理的にみっちり構成する点と、全体を通して自分で品質担保する点が身についたと思います。
なるほど。自分の書いてるものに対して前と後ろで言ってることちがくね?みたいな批判的な視点もてるもんね。
そうですね。そういう意味だとコンサル会社に入って良かったですね。
そう言えば今まで知らなかったけど、そもそもコンサル会社に入ろうと思ったのはなんでなの?
ぶっちゃけて言うと、小説書くために役立ちそうだったからですね。
理由は二つあって、単純にテクノロジー系の知識をつけたかったという点と、もう一つは論理的な構成力を身につけたかったという点です。
僕が大学一年生の時に伊藤計劃さんや円城塔さんが出てきて大変衝撃を受けたんですけど、伊藤計劃さんの『ハーモニー』や円城塔さんの『Boy's Surface』は、情報理論を下敷きにしていて、「ああ、こういう小説を書くためにはテクノロジーを勉強しないといけないんだな」と思った記憶があります。就活しはじめた時にも、ぼんやりとそういう意識で会社を受けていました。
加えて、当時ポエムはいくらでも書けたんですけど、どうしてもポエムのままで終わってしまって展開しないんです。文章の構成力が課題で、ポエムを論理で支えて細部に落とし込んで記述として構築する能力がなかったんですね。
それで、そういう能力がつく仕事ってなんだろうって調べたらコンサルに行きついたんです。コンサルってまさに論理と構成と構築じゃないですか。しかもどうやらITコンサルというものもあるらしいと知り、「おお、これで両方いけるやん」、と(笑)
すごい。まさに念願かなったりだ…。
あと、なぜ書けたか?ということについて考えると、今回はやる気がすごい出てたというのもあります。高校の同級生に堀江貴大っていう映画監督がいて、彼は黒沢清さんの弟子で、最近色々作品を発表してて映画界ではけっこう知られるようになった存在なんですけど、彼が名古屋で上映会をやる時に10年ぶりに再会して刺激をうけたんです。
上映会が終わって堀江くんと話してて、すごく楽しかったんですけど一方でなんかへこんでる自分がいたんです。「こんな風に自分の作品を作ってるやつがいるのに僕はただコメントしてるだけで、僕は何をやってるんだろう」みたいな。
なんか、僕達はもういつのまにか作らないとダメな年齢になってるんだって突きつけられた感じがして、すごく焦りを感じました。
わかる。すごい焦るよね。
えっ、意外です。メンさんはもうサラリーマンで生きるって腹くくってる人なのかなと思ってました。
結果的にサラリーマンが向いているんだろうけど、表現に関わることはできるよなって思うんだよね。
少なくともこれまでの自分を形作ってくれたカルチャーに対するリスペクトを何かしらの形でリターンしていかないといけないっていう義務感がずっとある。オレは悪く言えば半端者だけど、良い意味で言えばハイブリットととらえることもできるなって思うようになって。自分のTwitterのフォロワーはたぶん若いサラリーマンや就活生が多いのかなって思うんだけど、僕が見てきた素晴らしい世界のことを知ってほしいし、知った上で何を自分のコアにしていくのかを判断してくれたらいいなって思う。
かき回したいって気持ちはわかります。文化圏の隔たりみたいなものが凝り固まりすぎている感じがしますよね。
うん。文化圏に隔たりを作ること自体がもう古臭いし、良い意味でのミクスチャーが出来る時代になってるのに一個の領域の中で表現も生きること自体も完結しようとこだわらなくていいんじゃないかなって思う。そういうメッセージを出せればなって思ってる。
4. コラージュとサンプリングの奥に輝く先代へのリスペクト
ノイズミュージック、HIPHOP、小説と幅広く活動している樋口君だけど、これは絶対自分の表現の中には入れないといけないテーマみたいなものはあるのかな?
言葉にするのが難しいんですけど、コラージュやサンプリングがすごい好きで、僕はいつも、過去のモノをつかって自分の解釈を表現するということをやってます。小説も意図的に引用している箇所が多いです。Tha Blue Herbっていうアーティストの「未来は俺らの手の中」っていう曲に「自分がもらったものを分け合うドラマ、未来は俺らの手の中」というリリックがあるんですけど、何かを作っている時にはその言葉を思い出すことが多いですね。
自分が読んだり聴いたりしたものを使って新しい解釈を提示していくことが文化の営みだと思うので、過去のモノを過去のモノと明示しながらそれを刷新していくことをしていきたいです。
硬派だよね。先代へのリスペクトが強くて。
特にSFって積みかさねのジャンルなんです。たとえば純文学は「私がどう思うか」という着眼点が多かったりその比率が大きかったりするので、前例を踏まえることにあまりこだわらないと思うのですけど、SFは前の世代がやったことについて、「今の技術をつかうとこう再解釈できるよね」とか、「これが上乗せできるよね」みたいな実験を繰り返しているジャンルなんです。
へー。そういう意味だと音楽と似た所あるよね。
音楽でも特にテクノとかHIPHOPはかなり近いです。先代はこのサンプラーだったからこのシンコペーションでこのシーケンスを組んでたけど、今のサンプラーを使うと、もっと複雑に厚く長くできるよね、みたいに再解釈して再利用していく点が共通していると思います。
たとえば初期のSFでは人類の進歩の表現として、脳を結線して演算能力を高めるような描写があったり、脳や意識や知性をハードウェア的に捉えていたりするんですけど、インターネットが産まれてからは世界観がソフトウェア的になっていって、知性や意識をクラウド化して共有する描写になっていくんですね。
攻殻機動隊はもろにそうだったよね。
そうですね。攻殻機動隊は設定だけじゃなくてすごく細かいところのネーミングも先代のSFからサンプリングしてますよ。多すぎてここでは列挙できないんですけど(笑)
小説にOneohtrix Point NeverとかPrefuse73とかミュージシャンの名前もたくさん出てくるよね。それも先代へのリスペクトなのかな?
Oneohtrix Point NeverとかPrefuse73を出したのはいろんな意図があります。一つにはやはりサンプリングという共通点です。
Oneohtrix Point NeverやPrefuse73が所属するWARPレコードってサンプリング色の強いアーティストが所属するレーベルじゃないですか。それらを出すことで、「この小説も同じサンプリングでできてるんだぞ、そういう音楽を聴くように読んでね」というメッセージがあります。絶対伝わってないと思うんですけど。
あとはリスペクトしてる円城塔さんがAphex Twinを小説に登場させていて、そのオマージュの意味もあります。2007年にAphex Twinだったら2017年にはOneohtrix Point Neverだろうと。
ちなみに年号遊びで言えば、WARPレコードの設立は1989年で、僕の生年と同じです。だからなんなんだっていうのは本を読んで解釈してもらえれば嬉しいです。これもたぶん伝わらないと思うんですけど(笑)
伝わらねー…けど、言われればわかるよ(笑)。樋口くんのノイズミュージックのライブを見た時も小説を読みながら感じたことと一緒で、本当にひとつの小世界を作りこむことに労力を惜しまない所が、職人肌だぁと思うんだけど、昔一緒働いてる時そんな人だったか?って若干の違和感があって(笑)。
あー、たぶん僕仕事向いてないんですよ(笑)
好きなことやってる時の脳の稼働力が全然違うって感じるんですよね。
音楽も小説もそうですけど、神が降りてくるってよく言いますよね。たしかに能力以上のものができる瞬間があって、後から聴き返したり読み返したりして、「あの時よくこれ作ったな」って自分でも思うことがあります。
仕事だとそういう経験はあまりしないんですが(笑)
5. 小説中で光るラッパーとしてのポエム
ところで樋口君の文章ってすごくポエム性が強いよね。ラップっぽいというか。読んでて高揚感があるというか、音読した時に心地よく読めるように意図的に文末の語感をそろえたり、繰り返すフレーズをもってたりしてるよね。実際ラップしてるだけあるなと思った。
さっきも名前が上がってたTha Blue Herbのことは、僕も読みながら「インスパイアされてるんだろうな」って感じたな。
ありがとうございます。たぶん誰も気づいてないと思うんですけど、小説の中でも長文の中で韻踏んだりしてるんですよ。そういう遊びはすごく好きです。言葉遊びをするための箱を作るような感覚がありました。ポエムだけだと浮ついてしまうので、しっかりとした物語と設定の枠組みをつくるために小説という様式があるという感覚です。
Tha Blue Herbからの影響はめっちゃありますね。書いてる時ずっと聴いていましたし、ライブも観に行って衝動を搔き立てられました。
「自分にしかできないことをやれ。最初に成し遂げた人になれ」っていうメッセージをずっと浴びてました(笑)。
なるほど。書くにあたってこう読まれたいみたいな気持ちはあった?
Tha Blue Herbっぽいなと思う一方で、決して読む人全員に対して易しくはないというか、なじみのある文ではないと思うのだけど、そういうものをコレや!っていって世の中に出すのって勇気が必要じゃない?
自分は食うために書いてるわけではないのでそういう勇気はまったく必要ないですよ。自分にとって勇気はハードル設定とハードルに挑戦してる時だけ必要ですね。自分が課したハードルを超えられたら満足だし、自分が書いてて楽しい文章を書き続けられたら満足です。読者を想定することがあるとすれば、10人に1回読まれるものを作るよりも、1人に10回読まれる感じのものを作りたいですね。
6. 先輩MENSANSってぶっちゃけどうよ
これ聞くの恥ずかしいんだけどさ。企画の縛りだから毎回聞くんだけど、僕って樋口くんから見てどう見えてるの?
(笑)難しいですね。最初に会ってからメンさんのこと知っていく過程で感じていたのは、会社ではじめて自分と似ている人間に出会ったなって思いました。今は違いますけどあの時の会社の人みんな仕事死ぬほど好きだったじゃないですか。人生には仕事しかないみたいな感じで。
仕事するためにプライベートがあって、プライべートも仕事の体力をつけるための筋トレの時間だったり、昼飯の時の話も仕事だし読む本もビジネス書とか自己啓発本とかだし、僕は絶対にそうなれないな、この先大丈夫かなって不安だったんです。
でも、はじめてそうじゃない人に会えたなって思いましたね。メンさんは仕事は仕事で淡々とやってるけど、音楽の話とかアニメの話とかネットの話とかしてたほうが明らかに楽しそうだったし、仕事が一番じゃないっていうのが完全に滲み出てました(笑)
良い意味で理解できる仕事の仕方をしてたんですよね。他にもやりたいことがあってそのために仕事があるって感じで、そういう仕事の仕方なら、「わかる」って思いました。
(笑)完全に終わらせる仕事の仕方をしてたもんね。はやく帰ろうぜ…みたいな…。
7. 2作目への想い
SFコンテストの大賞を早々にとってしまったわけだけれども、この後の活動をどうしていきたいとかはあるの?次なにか書くならどういうテーマがいいとかあったりする?
まずは2作目の長編ですよね。1作目は大ネタをバンバン使ってますし、評価も毀誉褒貶はありますがどちらかと言えば褒められてる感じだし、というかむしろ絶賛じゃね?と戸惑うこともあるのですが、「処女作がこれで2作目どうすんの?」っていうコメントがけっこうあって、ハードルが上がってるなーと思います。
次のテーマとしては自分なりの宇宙論を書ければなって思ってます。1作目は近代史を捉えなおしながら、100年単位くらいで自分なりの文明論を書いたので、次は惑星・地球・宇宙みたいな、何億年単位の話が出来るといいなって。
UKバンドの新人みたいにならないでね(笑)。ファーストアルバムだけすごい評価されるみたいな。
いやー、それはそれでかっこいいですけどね。狙いすまして一作出して、カート・コバーンのいう「色あせていくより燃え尽きたほうがいい」みたいな。いや、がんばります(笑)
いやでも本当に意味があることだよね。たくさんの人に勇気を与えることだと思う。働き方改革の大きな文脈のひとつの英雄じゃん。
ありがとうございます。まあでも誰もそんな風には言ってくれないですけどね(笑)。
いやでも、コンサルやりながらでも小説書けますよって前例になったわけだし。きっと、小説書きたいけどお金は必要であきらめて就職してる学生さんって年間最低でも100人位はいるんじゃないかって思うんだけど、すごく勇気になったと思うんだよね。働きながらでも書けるし、やる気があればやる奴はなんだってやるんだよってわかったわけじゃん?
世界を見るとコンサルタントやりながら作家活動してる人けっこういますけどね。特にSFだと。
日本でやることに意味があるでしょ。オルタネイティブだよ。本職とか副職とか関係なくもっと自由にみんなが働きたいように働ける世の中になればいいなって思うよね。面白いこと仕事にしてさ。
ということで、次回作、期待してます。
はい。頑張ります。とりあえずはUKバンドの新人みたいにならないように気をつけます(笑)。
聴いている時に目を閉じると、旋律が奏でる情景を頭の中で視覚的な情報として思い描くことが出来る音楽が存在する。しかしながら、読んでいる時に書かれている言葉の読み以上の”音”を感じることが出来る小説は、いったいどれくらい存在しているのだろうか。
“小説を書くことは、ストーリーを入れるための箱を作ることだ”と彼はいう。
彼の小説にはたしかにリズムを刻んでいくビートが存在していて、そこに歌詞に位置するストーリーがきれいに収められている。
小説は視覚から、音楽は聴覚から、そんなチャネル別の鑑賞の仕方は過去の遺物になって、すべての表現は「体験する」以上でも以下でもなくなっていく。彼の小説はそんな未来の時代のプロローグなのかもしれない。
ではまた。