しんどいオカマのお悩み相談 その28.毎日最悪なことが起きてしんどい？

しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は毎日のように最悪なことが起こる女性からのお悩みよ。
たまにいるのよね、すさまじい不幸の求心力をもった人。アタシもその中の一人なんだけど、食堂の蛍光灯が頭に落ちてきたり、神社で薪が火を噴き上げながらアタシのほうに飛んできたりと、奇跡みたいな不幸っぷりよ。……生命線、短いしね。

【お悩み】
26歳の女性で、独身の会社員です。
私には「一日に一度は最悪なことが起こる」というジンクスがあります。
上司から嫌味を言われたり、コミュニケーションが上手く取れなかったり、休日でも職場から連絡が来たり。仕事以外でも「最悪だ……」と思うことが頻繁に起きます。
何事も起こらなかったとしても、「何事もなかった分だけ今から悪いことが起きるのではないか、失敗するのではないか」とビクビクしながら行動してしまい、自分に疲れます。
他人に相談しても「ネガティブなだけ」「プライドが高くて傷つきたくないだけ」という指摘を受けるだけです。
こんな自分をどうすればいいか、ご意見をいただけると幸いです。

今日、アタシが「最悪だ……」と思ったこと。
朝起きたらスマホが充電器から外れていて、電池容量が残り5%だった。ほとんど充電がないまま出勤。最悪。
いつも出勤途中にコーヒーを買っているコンビニで、レジに長蛇の列ができていて何も買えなかった。極寒と空腹の中で通勤。さらに最悪。
出社後に仕方なく給湯室でコーヒーを淹れようとすると、手がかじかんでコーヒー豆をぶちまけ、派遣のOLに睨まれる。もっと最悪。
取引先への訪問中にトラブル発生。専門部署に問い合わせるもたらい回し。最終的にスマホの電池切れにて持ち帰り。なおも最悪。
結局、解決せず取引先激怒。「わたくしの説明不足と知識不足と不徳の致すところにより……」と謝罪するはめに。ますます最悪。
取引先のお偉いさんに謝罪して、帰り際、朝に混み合っていたコンビニでコーヒーを買って帰ろうとすると自動ドアに「現在改装中、◯月リニューアルオープン」の文字。もうほんと、今日イチ最悪。

そして、どうしてアタシはオカマなのか、どうしてアタシはブスなのか、どうして彼氏がいないのか。

アタシの日常は最悪で溢れているの。
時々、神様が雲の上からこんなアタシを指差して、涙を流して笑い転げているんじゃないかと思うほどよ。
これは不幸自慢をしたいわけじゃないの。ただ、最悪だと思うハードルが人よりうんと低いだけなのよ。そして、人よりほんの少しだけ、本当に不幸なだけなの。

相談者のあなたが受けたアドバイスのように、アタシも「ネガティブなだけ」であり、「プライドが高くて傷つきたくないだけ」なのかもしれないわね。
だけど、結局は「自分がどう思うか、どう感じるか」でしか幸不幸なんて測れないものよね。
自分が「最悪だ、不幸だ！」と思えばそれは絶対の事実で、他人にとやかく言われたところで揺らぐものではないわ。
あなたもアタシも確かに不幸。そこは自信を持っていいわ。

「人間万事塞翁が馬」ということわざを知っているかしら？中国の故事成語で、こんな逸話から生まれた言葉よ。

老人は自分の持つ馬が逃げてしまい、己の不幸を嘆きました。
ところが、その馬はたくさんの良質な馬をつれて戻ってきました。
しかし、老人の息子はその馬から落ちて怪我をしてしまいました。
またもや不幸に嘆く老人でしたが、息子は怪我のおかげで戦争に召集されずに済みました……。

幸不幸は予測ができないもので、一見幸福に思えることが不幸となったり、反対に不幸と思えることが思わぬ幸福を呼び込んだりする、という意味よ。
とっても素敵なことわざよね。
ただ、このことわざで注意すべきは「それまでの幸不幸は、最後の幸不幸に上書きされてしまう」という点なのよ。
「戦に行かなかった息子は、数年後にニートのタダ飯食らいになってしまいました」みたいな後日談があれば、すべての運命が最悪への導きとなってしまうものね。
逆に、最後の最後に幸福なことさえあれば、それまでの不幸はすべて帳消しになるのよね。つまりは「終わりよければすべてよし」ってこと。

自己啓発本なんかで「一日の終わりに、今日一日のすべてに"感謝"をしよう！」なんて曖昧な内容をよく見かけるわよね。
「うるせぇわよ！こっちは泥水すすって生きてんのに、何に感謝しろっていうのよ！土か！！雨か！！」なんて言いたくなるのも山々だけど、あれはすべての物事を自己洗脳によって、強制的に「終わりよければすべてよし」へと持っていくかなりハードな手法なの。

日常で起こるどんな些細な嫌なことでも、あなたにとっての最悪であることに変わりはないわ。
だけど、その最悪なことによって何が起こったのかをよく考えてみてほしいのよ。
上司から嫌味を言われたことや、コミュニケーションが上手く取れなかったこと、休日でも職場から連絡が来たことに対して、最終的にどうなるのかしら。きっと何ともない、これまで通りの日常が続いていくだけではないかしら。
今日起こった最悪なことは、あなたの人生において”一番最悪”なことではないはずよね。
確かに小さなストレスはいずれ積み重なって大きな負荷となる可能性はあるけど、職を失ったり、誰かにいじめに近い嫌がらせを受けたり、自分の自由のすべてを奪われるよりは些細なことだわ。
一日の内に必ず最悪なことが起こるのであれば、「今日は最悪だったけど、これまでの人生においてはマシなほうだったな」と自分を納得させてみるのはどうかしら。
眠る前にベッドで「一日のすべてに感謝」なんて大仰なことはしなくてもいいけど、「今日の最悪は真の最悪ではない」というプチ洗脳で、日常の些細な幸福も見つけやすくなるのではないかしらね。

「人間万事塞翁が馬」と似たことわざに、「禍福は糾える縄の如し」というものがあるわ。幸不幸はよった縄のように交互に訪れる、という意味よ。
いつか必ず悪いことは起こるし、良いことも必ず起こる。当然よね、とびきりの不幸があれば、それ以外なら何でも幸せに感じるでしょうから。
ならばいっそ開き直って、ギャンブル感覚で行動を起こしてみるのもアリなんじゃないかしらね。
とびきりの不幸のあとには、とびきりの……いや、少なくとも、相対的に普通程度の幸せは待っている。
そうやって数々の不幸を味わうことで、いつか多少のことでは不幸を不幸と思わなくなれるものよ。
つまりは不幸に対して感覚が麻痺してしまうってことね。そうやって人は少しずつ強くなって、大人になっていくものなのよ。

さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
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