しんどいオカマのお悩み相談 その24.同性愛者だと思われてしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は同性愛者と間違われてしまう異性愛者の女性からのお悩みよ。
そうね、ゲイ業界ではひと目でゲイだとわかる格好をしているようなゲイを「イカニモ系」なんていうけど、たまにノンケがイカニモ系の格好をしていると、オカマ心にざわめきが起こることは確かね……。
【お悩み】
31歳の女性、既婚の会社員です。
私は異性愛者なのですが、周囲から同性愛者だと思われており、変に気を遣われて困っています。
昔から身長が高く、シンプルな服を着ているせいか、メイクをしていても男性と間違えられることがありました。
世間でLGBTという言葉が少しずつ浸透しはじめてからというもの、「あの人って実はそうなんじゃない……?」という疑いを、会社や趣味の場などで持たれるようになりました。
はっきりと聞いてくれればまだ答えようもあるのですが、「私たちは気にしないから、カミングアウトしてくれてもいいんだよ」と匂わすような空気を会話の端々に感じます。
個人的には、LGBTだろうがそうではなかろうが、他人にいちいち自分の内面を話す必要はないと考えています。
「私、異性が好きなんだよね!」と宣言する人なんていないし、逆もまた然りで、まったく言う必要のないことです。
周囲の人たちによる気遣いの意図が読めず困っています。このまま我慢し続ける他ないのでしょうか。
我慢し続ける必要はまったくないわ
学生時代に、自分がゲイだと周囲に信じてもらえなかったことがあるの。
いや、自慢じゃないの!決して「どうだい?俺ってゲイなのにノンケっぽいだろう?惚れてもいいんだぜ?」とゲイにしか通じないニッチな自慢をしたいわけじゃないの!
見た目が男性ホルモン強めのオッサンであるアタシは、女性を性的な目で見ていると勘違いされることがあるのよ。
物心ついた頃から心がオカマだったアタシ。
男性社会特有の体育会系ノリについていけなかったから、友人が女性だらけになるのはごく自然なことだったわ。
体育会系のノンケは大好物なのに、皮肉なものよね。
周囲もアタシが女性と一緒にいることを当然のように受け入れてくれていたし、アタシ自身も男性より女性と一緒にいたほうが、セクシャリティを気にせず自然体の自分でいられたの。
だけど、あるとき妙なうわさを耳にしたのよね。
アタシがゲイのフリをして女に近づいている、と。
まさかのファッションゲイ疑惑。何をどうまかり間違えばアタシがこの女どもに色目を使うというのか。
確かに女友達とは腕を組んで歩いたり、肩を寄せて話をすることもあったけど、それはあくまで信頼関係を築いたオカマと女の間柄だからよ。
勝手にアタシの友情を欲情に変えないでちょうだい。アタシが本当に好きなのはね、こんな根も葉もない噂を流してるアンタ……アンタなのよ……!!
その後、ゲイビデオのタイトルを数十本ほど暗唱するという禁断の手法で「アタシはゲイだ」と男子陣を説得することにより、なんとかファッションゲイ疑惑を払拭することができたのよ。
人はひとたび何かを思い込んだら、都合のいい理由や、辻褄を合わせるための理由を必死に探してしまうものなのよ。
セクシャリティの話に関わらず、自分のことを勘違いされたままでいるのは気持ちのいいものではないし、不都合も多いわ。
だから、相談者のあなたが自身への疑惑を払拭するためには、はっきりと自分から言及するしかないのよ。
「もしかして私のこと、LGBTだと思ってます?よく間違えられるんです」と。
少しだけ時代を先取りしすぎてしまったようね
「自分が異性愛者であることをわざわざ公言する必要はない」というあなたの考え方はとても素晴らしいわ。
それは至極まっとうな考え方ではあるけれど、残念ながら、ほんの少しだけ時代を先取りしすぎているのかもしれない。
インターネットの普及とSNSの発展も相まって、アタシたちLGBTの存在もようやく、身近なものとして認識されつつあるわね。
実社会でのカミングアウトは、差別や偏見を受け、職場や家庭の居場所を追われる可能性が少なからずあるからね。
ネットの世界はアカウントを消すだけで簡単に人間関係を断ち切ることができるから、実社会のようなしがらみが生まれにくく、LGBTも自分のセクシャリティを公言しやすいのよ。
最近では、SNSでは石を投げればオカマに当たると思えるほど、同族のオカマや、他の性的マイノリティの方々を毎日のように見かけるようになったわ。
アタシは、アタシたちがネット上で自分のセクシャリティを言えるようになっただけでも、LGBTにとっては大きな進歩だと思っているの。
昔はネット上であっても、一切の素顔と素性を隠して細々と交流する人しかいなかったからね。
もちろんあなたが言うように、LGBTであっても異性愛者であっても、誰も自分のセクシャリティを公言する必要のないほどに多様性が受け入れられた世界が理想よ。
でもね、世間の認識はまだ過渡期で、LGBTの存在をさも当然のように受け入れられるレベルにまで至っていないのが現実なのよ。
実際に「LGBTって本当に存在するの?俺のまわりには全然いないんだけど」なんて言ってる人がまだまだ沢山いる。
LGBTの存在が認識されつつあるといっても、彼らの人間としての本質は異性愛者と何ら変わらないのだと老若男女に知ってもらうのは、もう少し先の話なのよ。
ただそれは、アタシたちのようなカミングアウト済みのオカマや、アタシたちを認めてくれる人々が、人として周囲からの信頼を得ることで少しずつ変わっていくものだと思うのよね。
もし今後、あなたが同性愛者だと間違えられたら、こう言ってくれると嬉しいわ。
「もしかして私のこと、LGBTだと思ってます?よく間違えられるんです。だけど、気遣ってくれてありがとう」と。
気を遣われることは悪いことではないわ
アタシから見れば、あなたはとても恵まれているように見えるわよ。だって、周囲に気を遣ってくれる人がいるのだもの。
アタシのオカマ仲間みたいに「アンタ、なんでそんな貧乏なん?」とド直球で聞いてくるような人はいないでしょう。
誰よりも先進的な考え方を持つ頭のいいあなたなら、思いもよらず気を遣われることも、客観的に、肯定的に捉えられるはずよね。
誰もあなたのことを否定してはいないわ。だから、どうかあなたから彼らのことを否定しないでいてほしいの。
お互いを受け入れようとする心持ちが、誰もがセクシャリティを意識しなくてもいい世の中を、自然と作っていくものだから。
さて、今回のお悩み相談は以上よ。
このコーナーでは読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
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