しんどいオカマのお悩み相談 その21.食の価値観が合わなくてしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は恋人との食に対する価値観の違いに苦しむ女性からのお悩みよ。体重140kgのオカマ仲間が「色即是食(くう)、つまりこの世のものは全部食える」って言ったときは、もうこの女とは一緒に食事ができないなと思ったものだけど。
【お悩み】
20歳、大学生の女性です。
食に対する価値観の違う彼氏と付き合っていてしんどいです。
私は食べることが大好きなのですが、彼氏は食事を単なる栄養摂取として仕方なく取るものとしか思っていないようです。
また、彼は人一倍健康に気を遣っており、自らの食事に対してかなりの制限をかけています。
腸を休めるために朝ご飯を食べないとか、血糖値が上がるので間食に甘いものを食べないとか、発がん性物質がどうのと言って添加物を食べないとか。
彼と一緒にいるときは私もこれらのルールを強いられるため、好きなものを好きなように食べたい私にとっては大変なストレスです。
強要しないでとお願いしたこともありますが、「ずっと健康で、老けないでいてほしい」と言われ、彼と会っているときだけは仕方なくルールを守っています。
同棲の話も出ており、食の価値観が合わないままで大丈夫なのか不安です。どうすればいいのでしょうか?
食の価値観が合わないということ
あらやだ、うるせぇ男ねぇ。亜硝酸ナトリウムをボトルごとケツにぶち込んでやりたくなるわね。
アタシもあなたと同じ食道楽だから、自分の食事に口出しをされた瞬間に別れを切り出してしまうかもしれないわ、ボトルを片手に。
知り合いに、食の趣味と価値観が合わず離婚した夫婦がいるの。
結婚した当初はお互いに質素な食事を取って外食もほとんどしなかったらしいのだけど、奥さんが会社で昇進してからは状況が変わってしまったらしいわ。
接待や会食で美味しい料理とお酒の味を覚えて、これまでのような質素な食事では物足りなくなった。
次第に自宅で作る料理は量も品数も増えて、外食の回数もどんどん増えていったそうよ。
アタシだったら諸手を挙げて小躍りしながら喜ぶような状況だけど、元々食の細い旦那さんが食事の内容や食費について文句を言うようになって、毎日ケンカばかりするようになったみたい。結局、結婚から数年で離婚してしまったわ。
そもそも彼女、昔は居酒屋に行くとどんな料理でも必ず「ピーチ系の甘いチューハイかカクテルをお願いします!」って注文していたのに、最近は「この料理には純米大吟醸よりあえての大吟醸、そう思いません?」と大将に絡むほど人が変わってしまったのよ。
体重も劇的に増えて見た目も大きく変わったわ。もしかすると昔の彼女は、今の彼女らしき人物に喰われてしまったのかもしれない。
以前のような小食でか細い印象の彼女に運命を感じて結婚した旦那さんも気の毒といえば気の毒ね。アタシは今の彼女のほうが豪快で好きだけど。
こんな風に、食の価値観が合わないことは十分に別れの原因になりうるのよね。
反対に、食の価値観がまったく合わなくとも長続きしているゲイカップルも知っているわ。
なぜそんな二人の関係が上手くいくのか、次の章で説明するわね。クリームドーナツでも食べながらよーく聞きなさい。
どうすればそんな彼と上手くいくのかしら?
妖怪のづちのような大食いの男と、ナナフシのように身体が細く、おにぎり一つでお腹がいっぱいになる男。そんな凸凹なカップルが、5年以上も同棲して、いまだ付き合いはじめのように仲睦まじいわ。
彼らの食生活について一度聞いてみたことがあるのだけど、食事の量も味付けの好みも真反対だから、同じ食材を使いながらも味付けと量をわざわざ変えた食事を2種類作っているそうよ。
アタシはそんなしち面倒臭いことは絶対できないけど、これなら食の好みが合わなくても問題なく暮らしていけるのかもしれないわね。
ただ、これは「相手の好きなものを否定しない」という前提があってこそ成立する話なのよね。否定さえしなければ、価値観の違いとも上手く共生できる可能性がある、ということよ。
ちなみに一応言っておくけど、これはデブ専ゲイと細専ゲイの偏愛についてのお話じゃないから、勘違いするんじゃないわよ。
相談者のあなたは、「ずっと健康で、老けないでいてほしい」からとこれまでの食生活を否定され、彼なりの健康志向を無理強いさせられているわね。
そういったストレスを抱えている状態が、果たして健康だと言えるのかは疑問だわ。
これから同棲して、いずれ結婚するとなると、あと何十年も食の自由を制限されたストレスフルな状態が続いていくのよ。アタシだったら10日と経たずお空をアルカイック・スマイルで見つめるだけの抜け殻のようなオカマになりそうだわ。
健康って、心身ともに健全な状態じゃないと健康とは言えないの。このままでは、彼の望むような健康的で若々しいあなたではいられなくなるという皮肉な結果を迎えてしまうわよ。
ただ、あなたに食事に制限をかけた上で健康的に若々しくあってほしいという彼自身の価値観を否定することもできないわ。
あなたにとって食の自由を奪われることがいかに不健康につながるか、そして、満足のいく食事を取りながらも健康をどうやって保つか。彼との話し合いで、お互いの妥協点を見つけていくしかないわね。
彼のような健康オタクは健康に対してある種の信仰のようなものがあるから一筋縄ではいかないと思うけど、これから先も生活が続くのだから、ここで一つでもお互いの譲歩案を出せなきゃ二人に未来はないわよ。
無理せず尊重しあえる関係が理想よね
食事に対してのみならず、相手の価値観を肯定せずとも否定しないということは、良好な人間関係を築き長続きさせていく上でとても大切なことよね。
体重140kgのオカマ仲間が「アタシが機関車だとしたら、唐揚げは石炭みたいなものかな」と突然言い出したときに、「でもそれ、燃えてなくない?」と言ってしまったアタシは、思えば彼女の尊厳を踏みにじっていたのかもしれないわね。
「食い物の恨みは恐ろしい」なんて言葉もあるし、人の価値観の中でも、食についてはことさら尊重し、尊重される関係を周囲と築きたいものよね。そういうオカマにアタシはなりたい。
さて、今回のお悩み相談は以上よ。
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