しんどいオカマのお悩み相談 その19.ゲイを好きになってしんどい?

2017/09/13 UPDATE

しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回はゲイの男性を好きになってしまった女子高生からのお悩みよ。やっだ、女子高生!?オカマが「ノンケを好きになっちゃって」って悩んでいたら「迷惑をかけないようにしなさいよ」のひと言で終わるところだけど、そうもいかなさそうね。

【お悩み】
17歳の女子高生です。ゲイの男性に恋をしてしまいました。
彼とは学年も部活も同じで、ふたりきりで遊びに出かけるほど仲がいいです。
たまに女々しいところもありますが、それも含めてすべてが好きです。
彼からゲイだとカミングアウトされたときは、なんとなく予想は付いていましたがショックでした。
しかし、カミングアウトされてからは、ゲイであるがゆえの苦悩を抱えながら生きる彼を、これまで以上に愛おしく思うようになりました。

私はこれからずっと、彼にとってただの女友達のままなのでしょうか?
「私は恋愛対象としてアリなの?」とは返事が怖くて聞けていません。
彼のことをゲイだと知っているのは、彼の家族と私しかいないそうです。
苦しくて誰にも相談できません。どうすればいいのでしょうか?

ゲイと女性との恋愛って、それはもうゲイじゃないわよね

ごめんなさい、「たまに女々しいところもありますが」と聞いた瞬間に、「閉店」と書かれたシャッターを下ろしてしまいそうになったわ。
例外はあれど女々しい男や中性的な男はゲイ業界ではモテ筋から外れていて、オカマからは見向きもされない存在なのよ。
蓼食う虫も好き好きとはよく言ったものよね。どうやら相談者のあなたとアタシが恋敵として火花を散らすことはなさそうだわ。
まあ、彼もアタシみたいなオカマに対してはとうの昔に分厚い鋼鉄のシャッターを下ろしているでしょうけど。
オカマは恋のシャッター街に住んでいるのよ。

それでも、たとえあなたとアタシが恋敵になったとしても、残念ながらこの戦いは一応男であるオカマのほうが優勢よ。
バイセクシャルではなくゲイである彼は、どうしたって女性に恋愛感情を抱くことはできないのだから。
恋愛において、性の壁って法や倫理観の壁よりもずっと厚いの。
アタシたちゲイのほとんどが一度はノンケに恋をしたことがあるはずだけど、誰ひとりとして友情よりも特別な感情を受けてはいないわ。だって、ノンケはノンケだからノンケなのよ。
それはゲイに恋をしてしまった女性も同じこと。ゲイはゲイだからゲイなのよ。
だからあなたも、彼と恋愛関係になることはきっぱりと諦めなければならないわ。

ただ、ゲイであるがゆえに叶わぬ恋の中で生きる彼を愛おしく思ったのも、恋愛対象として見てもらえるかどうかを聞けなかったのも、あなたがこの恋の行く先を頭ではわかっているからではないかしら。
報われないいらだちと悲しみが心を苦しめていて、関係を壊したくないからと口をつむぐのね。
だけどアタシは、それが正しい愛情のありかただと思うわ。
ロシアの文豪トルストイが「愛は惜しみなく与う」という言葉を残しているわね。
愛情という心の動きは自分から相手に流れるものしか認識できないのだから、相手からの見返りなんてはなから期待すべきものではないのよ。
与え続け、決して奪わない。彼の苦悩を知って、彼の一番の理解者となる。
それが冒頭に書いた「迷惑をかけないようにする」ということなのよ。

実らぬ恋を諦めるためにはどうすればいいのかしら?

どこに需要があるのかはわからないけど、アタシが女性に告白されたときの話をしましょうか。
アタシって、夜はオカマなのだけど、昼はしがない男性のサラリーマンとして社会の中で生きているのよね。
「この資料に誤りがあるから、急ぎで修正してくれないかな?」と派遣のOLに笑顔で話しかけるも、心の中では「アンタの目は節穴なの!?ひと目見ればわかる間違いじゃないのよ!新入社員の森山くんに色目を使っている暇があるなら手元の資料をよく見なさいよ!!」と悶々としているような、哀れな隠れオカマなの。
そんな昼間の男性ぶった演技がよほど上手いのか、ごくたまに女性からアプローチを受けることがあるのよね。

あれは7年ほど前だったかしら。
彼女は同僚の友人で、何度かグループで遊びに出かけたことがあったのよね。
それからメールのやり取りをして、ふたりきりで映画や食事に行くようになって、ある日、行きつけのバーで告白されたの。

「こんなことを言うと変に思うかもしれないけど、実は好きなんだ」

晴天の霹靂というには少々大げさかもしれないけど、とても驚いたわ。
アタシが同性愛者だとは伝えていたから、彼女とはお互いに、ただの気の合う友人のひとりだと思っていたのよ。
だって昼間は男のフリをしているといっても、根はくたびれた小汚いオカマだからね。いったい誰が好きになるっていうのよ。
あっけにとられているところに、彼女はこう続けたわ。

「だから、これからも友達でいてほしい」

ごめんねと謝る彼女に、わかったとうなずくしかなかったわ。
それからもアタシはただの友人として接していたし、彼女もアタシに対して何か特別な態度をとることもなかったわ。
次の年に彼女が東京へ引っ越してからは、お互いの誕生日にお祝いのメッセージをやりとりするくらいの連絡頻度になってしまったけど、今でも彼女は友達よ。

彼女がアタシに告白したのは、胸の内を吐き出して、気持ちに踏ん切りをつけるためのエゴだったのかもしれないわね。
だけど「付き合ってくれ」と言わなかったのは、精一杯の愛情だったのだと今になって思うわ。
彼女はアタシに想いを打ち明けたけど、アタシから何も奪おうとはしなかったのよね。

だから相談者のあなたが、彼に想いを告白してみるのも、一つの気持ちの整理になるんじゃないかしら。
ただし、それは諦めるための告白よ。決して友情以上を求めてはいけないわ。だって愛は惜しみなく与うものだから。

人生は偶然の積み重ねなのよ

あらやだアタシったら、柄にもなくこんな昔の話をしてしまって。
実は先日、アタシに告白をした彼女から結婚の報告があったのよ。
送られてきた写真の中で、彼女は旦那さんの横でとても幸せそうに笑っていたわ。
もしもアタシがオカマに生まれていなければ、彼女の隣にいたのはアタシだったのかもしれないわねぇ。

お互いが愛しあってずっと一緒にいられるだなんて、運命や奇跡と呼べるような偶然の積み重ねよね。
あなたもアタシも、これからどういう人生が待っているのかはわからないわ。
もしかしたら死ぬまで誰かに片思いを続けているかもしれない。
だけどこれだけは言えるわ。「それでもいい」と心から思えたときに、幸せが待ち受けているのだと。

さて、今回のお悩み相談は以上よ。
このコーナーでは読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
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また、このコーナーに関するご意見やご感想もお待ちしているわ。とっても励みになるから、気軽に送ってもらえると嬉しいわ。よろしく。

投稿者名

BSディム

夜な夜なネオン街をねり歩くアラサーのオカマ。
昼間は真面目な係長だが、退勤から3駅で夜の帳をドレスに変える。
中学2年生で周囲にカミングアウトし、以後オカマとしての人生を歩む中堅オカマである。
Twitter:https://twitter.com/BS_dim Blog:http://aiokama.hatenablog.com