しんどいオカマのお悩み相談 その12.家族を愛せなくてしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は家族との関係に悩むアラサー女性からのお悩みよ。アタシも最近、両親の心中に想いをはせることが多くなったわ。手塩にかけて育てた息子が、まさか夜な夜な娘になっているだなんて、にわかには信じがたい現実でしょうから。
【お悩み】
アラサーの独身OLです。家族との関係に悩んでいます。
昔から家族仲がよくなく、常にケンカが絶えない家庭でした。精神の病を抱えた家族がいたり、厳しく叱って育てられたりしたこともあり、どうしても家族を敬遠してしまいます。最近は帰省のたびに結婚を急かされるし、地元へ戻るよう要求されることも増えてきて、とても憂鬱です。
とはいえ、決して裕福でない暮らしの中、何不自由なく育ててくれた感謝の念はあります。恩返しがしたいとも思う反面、家族と顔を合わせるのも辛く、電話すら怖くて無視してしまう自分がいます。円満な家族のイメージがわかず、結婚願望も抱くことができません。
今後、家族とどう接していけばいいでしょうか。そして、自分自身の心にどう折り合いをつければいいでしょうか。
家族のかたちは多様であってしかるべきよね
アタシの両親の話をするわね。ごめんなさいね、いきなりオカマの一家の話で。
実はアタシも、両親とは考え方や思想が相容れない部分が多くあるのよ。
普段はいがみ合うわけでも、ケンカをするわけでもない。むしろたくさんの愛情をもらっているわ。でも、良くも悪くも両親はごく普通の夫婦で、ごく普通の親なのよね。
それゆえに、オカマのアタシの憂鬱を心から理解してくれることは決してないのだと、家族と話せば話すほど痛感するのよ。相談者のあなたからすれば贅沢な悩みかもしれないけど。
でも、理解してもらう必要はないとも思っているわ。
血のつながりと心のつながりは別モノで、理解しあえる共通部分の大小は他人のそれと変わらないからね。
「血は水よりも濃い」なんていうけど、あんなのは嘘っぱち。続柄や一緒にいた時間すら、心のつながりには無関係だわ。
それでも、両親から受けた愛情には愛情をもって返したいとは思っているのよ。
愛情と諦念は矛盾しない。これがアタシから親への理解なの。
覚えておいてほしいのが、家族のありかたは千差万別で、幾重ものグラデーションが混ざりあって社会は形成されているということ。
アタシの家族は互いに愛情があっても理解しあえない関係だけど、互いを理解しながらも義務感だけで成り立っていたり、理解もなく愛情もない家庭だって、ごく当たり前に存在するのよ。
だから、あなたにとっての家族の存在も、ごく当たり前の「そういうもの」として認めなければならないわ。そして存在を認めたからといって相手を許容する必要はないし、無理にコミュニケーションをとる必要もない。
愛情深く心から理解しあえる家族は確かに素晴らしいけど、その理想は誰かが傷つくことで体現できるものではないわ。
相互理解に見切りをつけて家族と距離を置く選択に、負い目なんて感じなくていい。あなたにとって家族は「そういうもの」なのだから。
感謝の気持ちはどう表せばいいのかしら?
アラフィフのオカマ友達がいるんだけど、最近アタシとの会話が「老後」「健康」「過去の栄光」の3種類くらいしかないのよね。アタシ、まだアラサーなんだけど。
とりわけ老後のことはよく話題にのぼって、オカマ仲間と老人ホームを建ててイケメンヘルパーを雇いたいとか、古希までオカマでいられる自信がないとか、いつまでプールで脱げる肉体でいられるんだろうとか、そんな瑣末な話を飽きもせず繰り返しているわ。
でも、ひとしきりバカな話をしたあとは、いつも避けられない現実の話になるのよね。老後の孤独、お金の問題、病気の不安のような暗い話。
その中で、親孝行について話をしたことがあるの。
アラフィフオカマは早くに父親を亡くしていて、田舎には老いた母親がひとりで暮らしているそうよ。昔から母親との関係はあまりよくなかったらしくて、曰く「母は、母親である前にオンナだったのよ。アタシもオンナになったけど」とのことだった。
それでも育ててもらった恩があるからと、定期的に実家に顔を見せていたらしいけど、会えばいつもギクシャクして、たまにケンカもしていたみたい。
孝行したい時分に親はなしとはしばしば聞かれるものだから、いつかは関係を改善したいと思っていたら、ある日あっけなく解決したらしいのよ。
母の日に、兄弟と一緒にお金を渡したらしいわ。
一見、即物的で真心のカケラも感じない解決方法よね。でも、いま両親が抱えている不安って、いまアタシたちが将来に予見して嘆いている不安そのものだからね。お金は生活と心に余裕をつくるものだし、目に見える感謝の気持ちよ。ただ実家に帰って親に顔を見せるよりも、ずっと明確な幸福を手渡してあげることができるのよ。
カネに綺麗も汚いもないんだからさ。お金を送って遠くから様子を見ることは、あなたの親子関係でできる恩返しとしては最良の方法なんじゃないかしら。
でも、あなたの懐に余裕ができてからでいいわよ。親孝行だけを求めて子どもを育てる親はいないし、親孝行は子どもにとっての義務ではないからね。
家族に多くを望まない、家庭にすべてを求めない
結婚イコール幸せって、いつの時代にできた価値観なのかしらね。
オカマのアタシは今の法律では結婚して新しい家庭を持つことはできないけど、きっと法律が変わっても、アタシが家庭を持つことはないと思う。
だって、アタシのまわりには誰ひとり幸せな既婚者がいないのよ。偽装結婚したオカマ、半年で別居した同僚、DVに悩む還暦の主婦……。
これからつくる家庭が幸福なものであってほしいという願い、その結実が結婚なのに。円満な家庭を手に入れることが、幸運な人にのみもたらされる特別なものだなんてね。
あなたも家庭に円満なイメージがないなら、「家族はこれから築くものでなく、いずれ消えていくもの」と割りきって、ひとりで生きていくのも手よ。
オカマのアタシみたいにね。
さて、今回のお悩み相談は以上よ。
このコーナーでは読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
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