5歳さん嫁非公認コラム Episode:55「『HSP』って知ってますか?」
ちょっと奇抜な奥さまと元気な息子さん達とのユーモラスなエピソードが大人気!ツイッター界随一の恐(愛)妻家5歳(嫁公認アカウント)さんのコラム!
周囲に気を遣いすぎる、細かいことが気になって仕方ない、あらゆる刺激がストレスになって疲れる…あなたの周りにこんな人はいませんか?もしかして、それは生まれ持った“気質”なのかもしれません。
第1章 敏感すぎる嫁
僕の嫁は色んなことに対して敏感です。僕だったら全然気にしないようなことも、敏感なので見逃しません。だからなのか、嫁はとても疲れやすい。色んなことを感じて、それらにいちいち反応してしまい、心が摩耗してしまうのです。そんな敏感な嫁は、日常の中に潜むストレスと日々戦っています。嫁は一日の終わりに、その日感じたストレスについて僕に報告をしてきます。
パート先の店長がイライラしていて店の空気が悪かった、パートのおばちゃんが他のバイトにパワハラしている、帰りにスーパーへ行ったら商品がズラーッと並んでいて目が回った、などなど。僕からすると「そのくらい」と思っちゃうような些細なことでもストレスに感じるのです。その他にも、生活の中でストレスを感じることを書き出すとキリがありません。例えば、人混みに行くと周りの音が気になっちゃう、あと空気が悪い(本人曰く、酸素濃度が薄く感じるらしい)とか、車の運転も本当はしたくないと言っています。
僕自身は鈍感ってほどでもないですが、特にそれらのことで強くストレスを感じることはないので、なぜ嫁がそこまでストレスを感じるのか理解できない部分がありました。
そんな嫁に、最初こそ「気にしすぎだよ」と言っていたのですが、10年経ってもその感じ方に変化がないので、もしかしたら嫁は人よりも色んなことに対して敏感で、その感じ方は変えることのできない性質なんじゃないかと気づき始めたのです。
第2章 努力で変えられる部分、変えられない部分
人には変えられる部分とそうでない部分があります。正確に言うと、意識すれば変えられる部分と、意識の問題では解決できない部分があるのです。表層と深層とでも言い変えられるかもしれません。表層の部分だったら、例えば習慣や考え方を変えることで解決できるかもしれませんが、性質や気質といったような、意識してどうこうなる問題じゃないこともあります。変えられない部分というのは、つまり、その人の根本的な問題のことです。
例えば、うちの嫁の場合、すぐ不機嫌になるパート先の店長にはなるべく近付かないようにする、店長が何か言っていても右から左へ受け流すように心がけてみるとか、対処方法はいくらでもあるような気がします。対処して状況が好転するのならやってみる価値があります。ちなみに、今までも僕なりに考えて、嫁にはそのようなアドバイスをしてきました。アドバイスといっても「気にしすぎるなよ」とかそんなレベルでしたが。嫁も色々と工夫してきたとは思いますが、どうしたって敏感に受け取ってしまうらしいのです。
機嫌の悪い人からはなるべく離れたり、パート先で幅を利かせているボスみたいなおばちゃんとも距離を置いてみたり、色々やってみても「感じる」という部分は相変わらずで、嫁のストレス値は変わりませんでした。
わかりやすく職場のことを例に挙げてみましたが、そのほかにも嫁には色々感じやすい部分があります。一緒に環境や習慣を変えたり、対処方法を考えたりしましたが、明確な解決方法は見つからず、やはり根本的な問題なのだろうなと思っていました。嫁の敏感さの原因は何だろうか?と、色々調べていくうちに【HSP】に出会ったのです。
第3章 【HSP】とは?
みなさんは【HSP】という言葉をご存知でしょうか?
僕も最近知った言葉なのですが、【HSP】はHighly Sensitive Person (ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字を取って作られた言葉です。直訳すると「とても敏感な人」という意味。周りから見ていると「気にしすぎでしょ?」とつい言っちゃいたくなる、色んなことを敏感に感じてしまう人のことです。
僕は今まで、何事にも敏感な嫁に対して「気にしすぎだよ〜」「細かすぎ!」「誰もそんなこと気が付かないから」と言ってきました。しかし、最近HSPの存在を知って色々と調べてみると、あまりにも嫁に当てはまる事が多いのです。
ここで、HSPの特徴を挙げていきます。
【HSPの特徴】
・必要以上に空気を読んでしまい気疲れする
・長時間、人といると疲れる
・ほかの人の雑な仕事が気になってしまう
・周りの人と気分に影響を受けやすい
・やらなくてはいけないことがたくさんあると混乱する
・生活の変化を望まない
・驚きやすい
・他人が不快な思いをしているときに、解決方法がすぐにわかる
・失敗しないようにいつも気をつけている
・忙しいとひきこもりたくなる
感情の部分だけではなく、五感も敏感です。
・外の音が気になって眠れない
・空調に敏感
・空腹になるとイライラする
・痛みに敏感
・光に敏感
嫁はこれらの項目すべてに当てはまるわけではないのですが、かなりの部分で当てはまります。
読者の方の中には「こんな項目は大体の人が少なからず当てはまるだろ」と思う人もいることでしょう。確かに、職場に不機嫌な上司がいて良い気分になる人はいないし、横のデスクで雑な仕事をしている人がいたら気になりますよね。家の外で道路の工事をしていたら気になるし、腹が減っていたら誰でもイライラしますよね。
しかし、ここで重要なのは、HSPの人はこれらのストレスを感じたとき、明らかに支障をきたしてしまうということです。体調も悪くなります。そしてHSPの研究では、HSPは生まれ持った気質であることがわかっています。HSPの人が持つ繊細さは性格や育った環境によるものではなく、生まれ持ってのものなのです。ちなみに、HSPは5人に1人の割合で存在することがアメリカの心理学の研究でわかっています。
上で記述した項目が当てはまり、体調不良など、生活に支障をきたしていればHSPの可能性があるのです。ちなみに、当てはまる項目があったとしても、我慢できるほどならHSPではありません。
HSPのことを調べていくと、HSPは治すとかいうものではないことがわかります。
例えば、生まれつき身長が高いのと同じように、変えることができるものではないのです。
そして、繊細さというのは普段の生活に支障をきたす場合も多いですが、悪いことばかりではありません。繊細だからこそ色んなことに気が付くことができて、それが人間関係や仕事に役立つこともあるのです。
HSPの良い面は、繊細な感性があるので相手の気持ちを読み取ることができること。つまり、聞き上手だったりします。仕事でも細かいところのチェックが欠かせない業種だったり、細かい気配りが必要な仕事もありますよね。だから、適正な分野もあるということです。
ちなみに、仕事の面で嫁の話をさせてもらえば、嫁とは寿司屋のバイトで出会ったので一緒に働いていたことがあるんですが、当時はバイトのエースとして活躍していました。細かい所まで気が利くし、しっかりと仕事をするし、真面目で、よくできるバイトとして店長からも信頼されていました。それも、嫁が敏感で色々なことにすぐに気が付くからだと思うのです。今働いているパート先でも、嫁はエースとして働いています(めっちゃ疲れていますけどね)。HSPの人は生活の中で生きづらさを感じる部分が多々ありますが、敏感で繊細だということが長所でもあるということです。
第4章 受け止め方次第で、自分の強みに
「もしかしたら自分はHSPかもしれない」と感じた人がいるかもしれません。確かに、繊細だと生きていくだけで大変だと思いますが、その繊細さはあなたの良さでもあるのです。
だから、そのままでいいんだよということを伝えたい。そもそも、そういう気質で生まれてきたのだから、変えようとしなくてもいいのです。そのままの自分を受け入れましょう。
「どうしてこんなに気になっちゃうんだろう、もっと適当に生きていきたいのに」と切実に悩んでいる人も多いと思います。しかし、繰り返しますが、小さいことにちゃんと気が付けるのがあなたの良いところなのです。
あと、自分はHSPではないけど、自分の周りにHSPっぽい人がいるなと思ったら、5人に1人の割合で元々繊細な人がいるということを思い出してください。世の中にはどうしたって鈍感には生きていけない人たちが存在するのです。そのことを理解すれば、HSPの人もそうでない人も共存できるのかなと思います。
今回このコラムの中ではHSPの人がどうすれば生きやすくなるのかまでは書ききれないのですが、まずは当事者にもそうでない人にも、HSPという言葉を知ってもらいたいです。うちの嫁を含めて、世の中の生まれながらにして繊細な人たちが生きやすい社会になることを願いながら、これからも引き続き発信をしていきたいと思う。まずは、ここから。