しんどいオカマのお悩み相談 その11．先生への片思いがしんどい？

しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は先生に恋をした女子高生からのお悩みよ。
アタシ、頭の中ではもう何度もイケメン体育教師と恋愛、結婚、妊娠を繰り返しているから、回答には自信があるわ。大船に乗ったつもりでいなさい。

【お悩み】
18歳、女子高生です。既婚の先生に片思いをしています。
1年生のころから気になって、進路や人間関係、恋愛などの相談をしているうちに、次第に仲良くなりました。
先生に恋愛感情を持つことはタブーだとわかっています。この感情はただの憧れで、ファンのようなものだと自分に言い聞かせてはいるのですが、「もっと話がしたい」という気持ちで胸がいっぱいになります。
やり場のないこの気持ちをどうすれば抑えられるのでしょうか？

甘酸っぱい青春のお悩みをどうもありがとう。
世間擦れしたアタシみたいなオカマには無縁の話だと思いきや、アタシも中学時代に教育実習の先生に恋していたのを思い出したわ。
ひと目見た瞬間、電撃に打たれたような衝撃が走ったほどの超イケメンだったのよ。いわゆる一目惚れってやつね。

ただ、今思い返せば先生は調子に乗った大学生のクソガキそのものだったし、身体の線は細くて、顔はベビーフェイスで、まったくオカマ心をくすぐらない見た目だったのよね。今のアタシなら「あと10kgほどバルクアップして出直してこい」と一蹴しているわ。
それでも当時はあなたと同じように、「もっと話がしたい」「笑顔が見たい」「そしてあわよくば……」と、毎日欲の皮が張りに張っていたわ。
でもね、先生はイケメンだったから、女子生徒からの人気も高かったのよ。
そこでアタシは「近寄る女の根も葉もない噂を吹き込む」という、最悪なライバルの蹴落とし方を選んだのよね。
恋の作法を知らなかったアタシの行動は暴走機関車そのもので、女友達を何人も轢いてしまった。
その後、クラスでいわゆる「女の敵」となったアタシの学生時代が惨たんたるものだったことは言うまでもないわね。
それがアタシの初恋だったの。まるで昨日のことのように思い出せるのが本当にイタイわ。
先生も教育実習といえど、よくこんなオカマのサナギを相手にしてくれたものだと思う。

ただね、アタシも社会人になって気づいたのよ。大人が仕事を遂行する動機って、使命感に他ならないんだって。
アタシの昼の仕事はね、頬の筋肉が攣りそうになるほどの愛想笑いを張り付けて、お客さんに一切の不快感を与えず交渉を成立させることなの。つまりは営業ね。お賃金をいただいている以上、その役割に徹しなくてはならないのよ。
聖職と形容される教師という職業も、納められた学費から支払われるお賃金の上に成り立っていることを忘れてはならないわ。
そりゃもちろん人間だから、個々の生徒に対する感情に影響されることはあるわ。でもね、公私混同は職業人としては失格なの。あなたが先生と「仲良くなった」と認識している関係性は、先生にとってはあくまで職務に則ったものである可能性が高いわね。というか、そうじゃないと教職に就いた者としては不適任なのよ。

それにね、もし成人した社会人経験のある男性が、女子高生と本心から気があうと思えているようなら、それは幼児性に他ならないわ。逆をいえば、女子高生とめっちゃ気のあう社会人の男を、客観的に見たあなたは尊敬できるかしらってこと。
こういった事情や視点を踏まえておくのも、アタシのように暴走機関車と化さないためのひとつの抑止力になるんじゃないかしらね。

好きになってはならない人と聞いて思いつくのは、既婚者や親族、あとはオカマから見たノンケくらいかしらね。
想いを秘めることに耐えかねて、思い切ってノンケに告白をしたオカマを知っているわ。
同じサークルのノンケに号泣しながら告白し、いかに恋い焦がれているかを延々と伝えたあとで案の定フられ、その場にしゃがみこんで数十分間も慰めてもらったそうよ。
そのオカマはうっとりとした表情で思い出を語ってくれたけど、その告白方法はセクシャリティに関係なく単なる迷惑行為であることに早く気がついてほしいわね。

最悪の例を挙げたけど、誰かに対して一方的に恋愛感情を持つことは自由なの。こんな風に、相手や第三者の迷惑となりうる行為があって、はじめてタブーを犯したことになるのよね。
相談者のあなたが先生に対して恋愛感情を持ち続けることで、いったい誰が困るというのかしら？
おおいに憧れ、ファンであり続け、恋い焦がれて構わないわよ。

今後もし誰かに迷惑がかかるとすれば、あなたが今の教師と生徒という関係と距離感を壊してしまったときだと思うわ。
たとえば今の気持ちを先生に伝えようものなら、一生徒としての扱いは、望ましくない方向で今よりも特別なものになるでしょうね。相手が既婚者であるならば尚更よ。
ただ、あなたからの相談は「どうすれば付き合えるか」でなく「どうすれば気持ちを抑えられるか」だから、ある程度は分別をつけて、先生の立場を考慮しているのでしょうね。

それならアタシから言えることは、卒業までこのままでいなさい、ということだけよ。
強いて言うなら、もっと話したいと思うのであれば、教科書とノートを持って会いにいくことね。想いの表現方法は、告白だけではないんだから。

数年間で強制的に関係が終了してしまう教師と生徒の関係って、時に残酷なものよね。
アタシが恋をした教育実習の先生なんて、たった1ヶ月程度の関わりだったわ。

今はもう、彼も40歳を超えているわね。もしかすると奥さんがいて、お子さんがいて、子煩悩なイケメンパパになっていて、10kgバルクアップしているかもしれない。
もはや知る由もないし、当時失った女友達は戻ってこないけど、それでもあの1ヶ月間はアタシの暗い人生の中でも数少ない幸福感に包まれていたわ。

時の流れは、胸が締め付けられるような恋の思い出を、シーグラスのように丸く、淡いものに変えてくれるのよ。
あなたも20年後の同窓会で、「実はあのとき……」なんて言えたら好い。先生も教師冥利に尽きるはずよ。


さて、今回のお悩み相談は以上よ。
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