月刊住むひと vol.12 JR??線 ??駅 徒歩7分 賃料6.2万円 〜薄い壁、薄い天井〜

2019/05/09 UPDATE

この連載はほぼ実在する(ほぼです)ひとつの物件を取り上げて、この部屋に住んでいるひとの人生はどんなだろう、と勝手に妄想していくものです。

北向ハナウタが描く「住むこと」についての漫画とエッセイ、第12話。

交通:JR??線 ??駅 徒歩7分
賃料:6.2万円(管理費含む)
築年数:築17年
主要採光面:南
間取り:1K / 20.8㎡
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その他:木造、1階

早く魚を切ったらどうだ

ほぼ満開の桜を横目に、騒音に悩まされているという友人の話を聞いた。

両隣が恋人を含む多くの人間を呼びがちなタイプの人々らしく、深夜だろうがなんだろうが宴を始めるというのだ。隣の騒ぎを録音したものを聞かせてもらったのだけど、え、フェンス越し?というくらいはっきり会話のわかる音量で聞こえた。「ワイン開けていいっすか?」「早く魚切れよ〜!」とのこと。早く魚を切ったらどうだ。

薄い壁の話、たくさん集まりました

できれば無縁でいたいけど、暮らしていくうえで切っても切れない騒音問題。
今回は「薄い壁や天井にまつわる話」をTwitterで募った。日頃の鬱憤なのか大豊作だったのでわくわく紹介したい。

お隣さんの目覚まし時計で起床、そのまま流れるめざましテレビの情報を得、エアコンのスイッチを入れる音まで聞こえると言う感じでした。
占いで自分のを見たら消すタイプらしく、最終的に牡牛座のA型と言うところまで教えてくれました。

星座と血液型まで特定するのすごい、完全にプロファイリングだ。こうなったら情報を得てやろうというたくましさが頼もしい。

夜9時頃、たびたび掃除機をかける音がしていてマメだなと思っていたのですが、そのうち毎日聞こえるようになり、ふと気づいたのですが掃除機ではなく腹筋ローラーの音でした。わりとガタイのいいお兄さんが2階に住んでいました。

「あ、これ掃除機じゃなくて腹筋ローラーだ」と気づいたきっかけが知りたい、お兄さんがどんどんガタイがよくなってきて気づいた、とかだといいな。

職場の寮で、私は角部屋だったのですが反対側の角部屋(間に3部屋ある)で先輩が携帯で彼女と話しているのが聴こえました...。

壁の薄さはさておき、3部屋を貫通する先輩の声量が気になる。職場寮の壁が薄い、という声は何件か寄せられた。

木造アパートに住んでました。隣人が夜中に歌い出す人で、ある日の3曲目はサウダージでした。

なんでサウダージについて触れたんだ。

「隣の部屋の人が行為に及んでるときの声すごい聞こえるし、なんか女のほうの声が日によって違う、何人かいるっぽい」「クズじゃん」っていう会話が隣の部屋から聞こえてきた。

クズ側だ。

このエピソードに限らず、エッチな話が全投稿の半数を占めるくらい寄せられてきた(上記以外はみんな被害者側)。ちょっと、あまりつまびらかには書けないので、「みんな大変だなー」という感想だけお届けします。
ちなみに、隣で始まった際はみんな何かしらの音で対抗するとのこと。以下のとおり、ご参考までに。

・社歌
・詩の音読
・名探偵コナンのオープニング

騒音対策は”ポジティブな心”

エッチな対策には詩の音読が有効だということはわかったが、通常の騒音はどうすればいいのだろうか。みんながどのような対策をしているかをまとめた。

対策1:何かしらのツールを導入する

・断熱材を入れたらマシになりました
・米軍が使っている耳栓を買いました
・遮音カーテンは意味ないです


漫画でも取り上げたが、米軍が使っている耳栓はけっこういいらしい。賃貸だと防音のために部屋の改造をほどこすのはむずかしく泣き寝入りしがちだ。耳栓で逃避するしかないのか…?


対策2:物件を選ぶ

・大きな道路沿いの物件にする
・大学が近い駅は危険
・家賃が高いと民度が高くなり迷惑な騒音を避けられる


そもそも静かな物件を選べばいい、という考え方。大きな道路沿いうるさそう、と思ったのだけど、家賃の低さのわりに防音がしっかりしている物件が多いらしい。もちろん車の走る音は聴こえるけど、人の声よりマシだし慣れる、とのこと。なるほど。

家賃を高くするのは、これ以上ない正論だ。家賃を高くすれば壁も厚くなる(部屋の構造も変わる)、隣人もいい具合になる。もうこのあたりは日々の平穏と貯金をどう天秤にかけるかだよなー。

今回の物件は、どこの駅にも迷惑をかけたくなかったので路線も駅名も伏せさせていただいた。各自思い思いの駅を想像してください。


対策3:ポジティブになる

・ウルトラマンに変身するのかってくらいデカいくしゃみをするオッサンが隣に住んでるけど毎回本当に変身してると思ってやり過ごしてます
・自分はテレビを持っていませんでしたが、隣の部屋のテレビ音が丸聞こえでした。「壁ラジオ」と呼んで楽しんで聴いていました


最後はもうポジティブになる、という精神論。でかいくしゃみのオッサン、本当に毎回変身してたらいいですね。

あとは「ハードコアな父が家の窓に爆竹を投げ込んで追い出してしまったことがあります」という対策方法も寄せられた。参考にしたい。

他にも紹介しきれないくらいエピソードが集まった。

ウホホ!おひょ!と奇声が聞こえ、早朝に走り回るので隣人の意外な一面に動揺したが、こっそり猫を飼っていて、一緒に遊んだり朝の運動会をしてると気付いた。

壁が薄いと秋冬はお風呂がすさまじく寒いです 外かと思った。

隣人の咳が何日も続いて聞こえ、あるときばったり会った際のど飴を無言でばさばさ渡したら「千里眼……?おかあさん……?」と目を白黒とされた。

池袋の1kマンションに住んでたとき真下の部屋が東南アジア系の人たちのタコ部屋になっていた。夜中布団で横たわってると床を通して民族音楽が聞こえてきてそれを聞いて寝てた。

旦那がダイエットの一環として鏡の前でマッスルポーズを当時毎晩全力でしていたのですが、「今日ポージングしないの?」「今する!」という会話を隣に聞かれ、笑い合ってる声が聞こえてきました。

静かに暮らしたい、でもたまには救われることもある、らしい

筆者も、隣人の騒音で満足していた部屋を泣く泣く手放した経験がある。

パリピではなく平日の深夜3、4時に突然一人で発狂するタイプの隣人で、直接注意するのも気が引ける。管理会社に掛け合うも「警察に言ってください」と取りつく島もなく、辟易して引っ越すことにしたのだった。

冒頭で騒音の話をしていた友人は、”壁が薄い以外は不満がない”とのことでもう少しこの部屋に住むつもりらしい。薄い壁物件についてこんな話もしてくれた。

めちゃくちゃつらくなった時に下の階から爆音の『恋愛サーキュレーション』(アニソン)が流れてきて「ありがとう!!!」と思った。


「神様ありがとう」だ。隣人の気配に救われることもあるのだ…とほっこりしたが、やっぱり基本的には静かな部屋がいいな、おれは。

投稿者名

北向ハナウタ

東京を拠点に活動する兼業ライター・イラストレーター。
好きなおでんは大根、好きなサイゼリヤメニューは、たらこソースシシリー風です。

twitter:@1106joe
blog:http://kitamuki.hateblo.jp/