わが家の「ごちそう」!心にも体にもうれしい、忙しい日の味方の鍋料理
日々の暮らしを楽しむライフスタイルにもファンが多い、モデルの高山都さん。日々のおうちごはんを楽しむ様子がアップされるSNSも大人気です。そんな高山さんに「明日の私を助ける一品」をテーマにエッセイを書いていただきました。高山さんと夫の安井達郎さんにとって「ごちそう」であるお鍋。翌日にも大きなお楽しみが待っているそうです。
毎年言っている気がするが、去年の12月も凄まじいスピードで駆け抜けた。私も夫も食いしん坊で、食に対してのこだわりも執着も愛も強めだ。一食たりとも手も心も抜きたくないと思ってはいるのに、どうにもこうにも手も心も追いつかない日々だった。
早朝ロケがあり、また夕方から夜まで別の現場。帰宅して食事してお風呂に入ったら、また翌日も朝から撮影…。
忙しいという字は「心を亡くす」と書く。気を抜くと、心がバタンと倒れてしまいそうなくらいスケジュールは詰まっていた。そんな時こそ、きちんと食べたい。
私にとって、自宅の畳の小上がりで夫とささやかな晩酌をすることは、がんばった一日のごほうびで、いちばん心がほぐれ癒される時間なのだ。
"食べることは明日への活力であり、しっかり働くための準備である"
そう考えると、「なんでもいいや」とか、「これでいいや」では、良い仕事が出来ない。全力で働くためには、きちんと食べねば。
そこで、鍋の出番である。
わが家の献立において、鍋は「手抜き」ではない。鍋料理は最高のごちそうであり、栄養バランスもほぼ完璧。
だから、鍋。鍋さまさま!鍋最高!
「鍋でいい」ではないのだ。鍋が、いい!
わが家では季節を問わず、メニューを決めてはせっせとこしらえる。ただ、小さなルールがある。それは、市販のスープには頼らないこと。
これは私が作る時も夫にお願いする時も静かに守るルールになっている。なぜなら、自分たち好みの味に調整し、安心してスープをごくごく飲み干したいから。そのために、手軽な下準備だけは怠らない。切り方や野菜の種類やその辺はなんでも良いので、ベースになるスープはていねいに手をかける。
これを守るだけで、「なんとかなる」のだ。
さて、わが家には、これさえあればという最高の鍋レシピがある。とにかく簡単なのに、旨みは最高。
材料は、まず鶏手羽元。これは2人分で1パックあればじゅうぶん。だいたい7〜8本ほど。
あとはつくね用の鶏むねひき肉、塩、酒、卵、片栗粉、生姜のすりおろし、ねぎのみじん切り。
スープは、水、昆布、生姜、ねぎの青い部分、塩、酒。
あとは季節の野菜やきのこ、豆腐などお好みで。
鶏手羽元は、ハサミで肉と骨の間にチョキチョキと切り込みを入れ、塩麹と酒でかるくマリネしておく。
鍋に、昆布、生姜、ねぎの青い部分と水を入れ、煮立てたらマリネした鶏手羽元を汁ごと入れて、酒をドボドボと追加。
あとは、アクを取りながら弱火で最低1時間…(できれば2時間)コトコト火にかける。好みの塩加減で調味すれば、うっとり極上の鶏スープの完成だ。
スープは、強めの塩にすればお店のような味になるし、ふだんは翌朝浮腫まないために、(モデルにとっての天敵は塩分!)最低限の塩味に抑えて、あとは各々で塩やら柚子胡椒やらでお椀の中でそれぞれの好みに仕上げるようにしている。
スープを煮る間につくねのタネを作る。鶏むねひき肉に塩を加えてよく練り、酒、水、卵、片栗粉、生姜のすりおろし、ねぎのみじん切りを加えてよく混ぜる。少しずつ酒や水を足していき、少し緩めにするのがポイント。ねぎや白菜の芯など、硬めの野菜を入れたあとに、スプーンで丸めてスープにドボン。あっさりしていてふわふわ軽くて、いくらでも食べられる。
あとは好きな野菜やきのこを追加。わが家は冬だけじゃなくて一年中、季節の食材を用いて鍋料理をせっせとこしらえている。四季のある日本で考える鍋料理の楽しいこと。夫も私も野菜やきのこを率先して食べる。こんなに食べられるの?とよくビックリされるが、煮込むとかさがグンと減るので、ペロリと完食してしまう。
このレシピのほかにも、ダイエットを…とか体調不良だ…なんて時は、昆布と水とおいしい豆腐で湯豆腐も良い。肉や魚を入れない代わりに、ちょっとだけ贅沢して豆腐とポン酢は良いものを。そこだけがポイント。
さて、そんな具材を目いっぱい味わったら、必ずスープは少し残しておく。
わが家の場合だいたい締めは翌日に持ち越すので、朝起きたらちょろっと残ったスープにごはんをドボンと投入し、足りなければ水や酒を足して塩で調味する。グツグツ煮えてきたらかき混ぜ、溶き卵を土鍋の中で大きく2周。火を止めふたをして3分待てば、最高のごちそうの完成だ。
私は子どもの頃から、この「翌日おじや」に目がない。どんなに眠くても、おじやの香りがしたら飛び起きた。
30年以上経った今でも変わらず、鍋の翌日は張り切ってベッドから起き上がりおじやを作る。ふたを開けて湯気を浴びながら、ふたりで小さな歓声をあげる朝は、気分が良い。
鍋って最後まで優秀なごちそうだ。